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開発も会社も「アジャイル」に。ギルドワークス起業の理由(後編) #agile #devlove

2014.05.19 Category:技術コラム Tag: , , ,

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コミュニティ活動を通じてギルドワークスの創業メンバーと出会った市谷氏は、どんな会社を目指して起業したのか。

後編は創業のきっかけとギルドワークスが目指す開発スタイルと今後の目標について語ってもらった。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

目指すものはエンジニアの「ギルド」

「正しいものを正しくつくる!!」をテーマに掲げ、志を同じくする仲間とギルドワークスを立ち上げた市谷氏。(⇒前編参照

「そもそも、いい開発って何だろう。いい開発と言えるには、どうあるべきなんだろう」という話も上がるようになっていたという。市谷氏も転職を経験したが、次第に、既存の組織に乗っているだけでは、理想の実現は難しいのではと考え始める。

ギルドワークスを一緒に立ち上げた、僕以外の3人のメンバーとも、時折独立について話し合ったりするようになりました。もっともその頃は、『みんなで立ち上げよう』ということではなく、3人それぞれと、『それじゃあ、そのうち2人で一緒に独立してみるか』なんて言っていただけなんですけれど」(市谷氏)

そんな状態が1年ほど続いた後に、事態は動く。きっかけは、増田氏からだった。

「一つの会社にい続けると、どうしても考え方も、技術も幅が狭くなる。エンジニアは、絶対転職したほうがいい、というのが僕の持論。さらにその延長として、独立がある。僕自身、彼もそろそろ独立したほうがいいんじゃないかと思っていて、その暁には、ビジネス・パートナーとして支援してもいいかな、なんて思っていたんです。

その一方で、今、この会社、ギルドワークスが間借りしているSBヒューマンキャピタルとは、僕は以前から付き合いがあって、ここに常駐して情報システム部長のような仕事をしていた時期もあります。

そんな背景があって、同社から、IT関係の新事業展開の相談を受けたときに、『それでは、ITエンジニアのコミュニティのFounderで、市谷さんという人を紹介しましょう。彼と組んだら、何か新ビジネスができるかもしれませんよ』と。それが去年後半のことです」(増田氏)

「結局それが、独立に踏み切るきっかけになりました。もともと、現メンバーのそれぞれと独立の夢を話していたと先ほど言いましたが、実際、1人、2人でやっていくのは、どうとでもなるような気がしていたんです。しかし一方で、『本当にそれでいいのか?』という気もしていた。

『DevLOVE』も、だんだんと規模が大きくなって、現在、参加している人はおよそ3000人。これからももっと増えていくでしょう。しかしそこで、旗揚げした本人が、『1人でやっていきますわ』とフェイドアウトしてしまうのは、ちょっと“違う”だろうと。

何か新しい働き方、新しい選択肢を作れないかと考えたのです。舗装もされていないケモノ道かもしれませんけども、何か道を切り開いてみたい。だいぶ大変な道を選んだものだと、思わなくもないですけれど(笑)」(市谷氏)

第一の目標は、『いい開発』を実現したい

こうして設立されたギルドワークスの事業は、「会社概要」から引き写せば、

  • ソフトウェア企画・開発・運用・保守
  • ソフトウェア企画開発に関するコンサルティングおよび教育

ということになる。もちろんこれだけ見れば、一般のソフトウェア開発会社、コンサルティング会社と変わらない。しかし、その“あり方”には、ちょっとした違いがある。

「第一の目標は、『いい開発』を実現したい、ということです。『正しいものを正しくつくる!!』というのが我々の新しい会社のテーマですが、しかし、実際には絶対的な『正しさ』」というものはない。時と場合により、『正しさ』というのは違う。その状況で一番正しいもの、正しいやり方はどこにあるのかを、その都度探していかないといけない。我々としては、そんな目標を、作り手と一緒に探したいというクライアントさんと仕事をしたいと思っています。

コンセプトはもう一つあります。それは、我々の会社は、現時点ではメンバーは4人しかいません。例えば増田さんは業務サービス系、上野さんはモバイル系といった具合に、4人それぞれ専門分野、得意分野は違いますが、それでも当然ながら4人でカバーできることには限りがあり、出来ないこともたくさんあります。かといって、今後、開発陣をどんどん採用して充実させていこうという計画もありません。

自分たちがこれまで培ってきた繋がりの中から、課題に対抗できる同志を探し、一緒にチームを組む。適したタイミングで適したチームを組む「適時適チーム」のモデルを育んでいきたいと思っています」(市谷氏)

「会社として、さまざまなものを囲い込む」のではなく、エンジニアのコミュニティの中で、ゆるやかに彼らと繋がり、そのハブの役割を果たしていく。それによって、現メンバーが持つスキルを越えて、クライアントたる企業にも、開発に携わるエンジニアにも、「よりよい開発のかたち」を提示できれば、ということだろう。

「だから、開発のパワーを上げるために人を集めるのは、ネットワークに任せてしまう。もちろんビジネスなわけで、案件ごとにそれぞれ条件がある。けれど、意外と行けそうだと思うんですが、実際に声をかけると、皆ほとんど前向きに検討してくれる。考えてみれば当然かもしれない。こちらとしても『この案件はあの人にうってつけかもしれない、あの人ならやりたいと思うかもしれない』と、その人の得意なところの話を持っていくわけですから。

会社を立ち上げたばかりではありますが、すでに受注で3~4件の仕事が始まっています。そのいずれも、それぞれ得意とする人に声をかけて担当してもらうというパターンです。

私自身、以前は数名の小規模な会社にいましたが、そこでは請けた仕事は自己解決を目指していた。しかしやはりそれでは、どうしてもあちこちに無理が出てくるんですね。しかし、会社組織の枠を越えて大きなネットワークが控えていると、たとえ直接の仕事ではなくても、多少の相談にも乗ってもらえたり。それが、よりよいものを提供することに繋がっていく。まさにそれは『ギルド』。だからこそ、社名にもそれを取り入れているんですよ」(増田氏)

開発も会社も「アジャイル」に

市谷氏は、かねてより“アジャイルな開発”を大きなテーマとしている。
アジャイルソフトウェア開発の手法の一つ、「リーンソフトウェア開発」に関する書籍の翻訳に関わったのも、その一環。

例えば、ソフトウェア開発の現場では、往々にして開発コストの超過という問題が起きる。「見積りが甘かった」と言われればそうなのかもしれないが、より掘り下げて考えれば、要するに、「当初想定した以上のことをしているから、予算が足りなくなる」ということになる。

その原因は、「作っているもの」と「お客さんが望んでいるもの」とに乖離があるため。本来、お客さんが欲していないものを作ってしまい、やり直しの必要が出てくる。さらには、お客さんが望むものそれ自体がきちんと定義できておらず、曖昧なままであるために、作った後で「これは違う」が次々に出てきて、やり直しが終わらない。これでは、コスト超過が起きないほうがおかしい。

これを防ぐには、

  • 必要のないものは作らない
  • 作るものに対し、お客さんと開発の現場とで認識の相違をなくす
  • 作っているものが正しいものなのかを検証する

――などが必要になる。

実際にこうした対処を実現するには、「何をすべきか」をリスト化しチーム内で検討、さらにお客さんに優先順位をきっちり付けてもらうことで、何を開発すべきかを明確化する(プロダクトバックログ)とか、やるべき作業とその進捗状況を細かくボードに貼り付ける、かんばんボードを使ったプロジェクトの見える化を図るといった、さまざまなプラクティスがある。やるべきこと、やっていること、目標をはっきりさせて、無駄を省き、「正しい」やり方を探していく。

以上はリーンソフトウェア開発の現場における考え方、対処法の一例だが、こうした考え方は、「プロジェクト、チーム、目的などコンテキストに応じてその時その場の正しさを関係者が一緒になって探す――正しいものを正しくつくる」という、ギルドワークスのテーマのベースともなっている。

「我々のまわりに緩やかに広がっているエンジニアのコミュニティに属する人たちにとって、『本当のやりたいこと』を捜し求めるうえで、この会社が選択肢を提供できる存在であればいいな、と思うんです」(増田氏)

「既存の境界を越えていきたい、という思いはありますね。開発においても、ビジネスにおいても、働き方においても、です。もちろん、例えば開発について考えると、クライアント、デベロッパー、デザイナーそれぞれに役割がありますから、境界が全く不要というわけではないけれど、そこで固定してしまわず、必要とあれば一歩踏み出してみる。そこから、今までにない価値が生まれるのだと思います」(市谷氏)

(前編)「すべてはコミュニティから始まった」創業メンバーが明かすギルドワークス起業の理由を読む

<取材者プロフィール>

市谷聡啓氏市谷 聡啓(いちたに としひろ)氏
ギルドワークス株式会社 代表取締役
システム企画案やサービスのアイデアからのコンセプトメイキング(プロダクトオーナー支援)、アジャイル開発の運営・マネジメントを得意とする。属している組織にも分野・言語に捉われない、開発エンジニアのためのコミュニティ「DevLOVE」のFounder(設立者)。「リーン開発の現場 カンバンによる大規模プロジェクトの運営」(Henrik Kniberg著)の共同訳書もあり、アジャイルソフトウェア開発、リーンソフトウェア開発のエバンジェリストの1人。

増田亨氏増田 亨(ますだ とおる)氏
ギルドワークス株式会社 取締役
業務アプリケーションのアーキテクト。
ビジネスの関心事を正しく理解し、顧客に価値あるソフトウェアを届けるために、日々「ドメイン駆動設計」を実践している。
日本最大級の60万件以上の求人情報サイト「イーキャリアJobSearch」の主任設計者。非同期メッセージング/API/クラウド技術を組み合わせた疎結合のシステム間連携方式でサービスを支えている。

上野潤一郎氏上野 潤一郎(うえの じゅんいちろう)氏
ギルドワークス株式会社
UI周りを得意とし、Webやスマホのアプリ機能を上手く活かせる方法を提案。かつてテスト専門部隊に所属していたこともあり、テストの視点から全体観を見渡し整合性を見極めることを重要視している。クラウド(主にAWS)を利用してインフラからシステムやサービスを支える。大手音楽業界の社内Webアプリケーション、写真管理サービス、AWSを用いた音楽配信システム、学校向け校務支援Webアプリケーション、AWS環境移行などの実績を持つ。

(執筆:川畑英毅/撮影:刑部友康)

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