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東大法学部卒・31歳無職はなぜ第一線プログラマになれたのか──freee平栗遵宜の「仕事の流儀」

2014.09.26 Category:【連載】ギークたちの『仕事の流儀』 Tag: , , , ,

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クラウド型会計ソフトで躍進中のfreee。スタートアップならではのユニークな人材が豊富だ。
ユニークさで群を抜くのは、東大法学部卒、31歳無職職歴なしからのfreee第1号社員。プログラムはまったくの素人だったのに1年足らずで欠かせない戦力になった平栗遵宜さんの例だろう。
彼はいかにしてプログラマになれたのか。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

31歳・職歴なし、プログラミング経験全くのゼロ

弁護士の父の法律事務所を継ぐべく、東大法学部に入学。司法試験を受けつつも、大学生の時にとある出来事がきっかけで大金を手にし、ニートを決め込んでいました。31歳まで生きながらえるも、サブプライムローンやリーマンショックの影響で予定より早く資金ショートに陥り、就職を決意。

どうせだったらこれまでと全く関係のない仕事をしようと職を探していたところ、友人の知り合いが最近スタートアップを始めたという話を聞いて、これだと思い入社。それが今のfreeeでした。

31歳無職、職歴なし、プログラミング経験なし。けれど、「何でもやるし、1年間無給でいいから雇ってくれ」と、半ば強引に押し入って入社しました。

当時は、創業者の佐々木と横路しかいません。私は最初の社員。しかも「クラウド会計ソフトfreee」リリース前の修羅場の時で、私のようなド素人にプログラミングを教える時間もありません。入社2日目に佐々木から、RubyのテストフレームワークであるRSpecのファイルを渡されてひと言「テストケース増やしといて」。

RSpecって何、テストって何、という状態でしたが、とても「本を読んで勉強します」と言える雰囲気ではありません。コードとにらめっこしながら、なんとか解読していくしかありませんでした。

しばらくは修行僧のような日々。ひたすらコードを読み、コードの意図を読み取ろうとする。自分であれこれ試して動かしてみる。入門書の類はあまり読みませんでした。今はオンラインにドキュメントもあるし、ネット上の情報も豊富。ニート時代に磨き上げた検索スキルが大変役立ちました。

本を読んでいないので、当たり前のことを知らなくて驚かれたりもしましたが、実務から学ぶのがスタートアップではいちばん効率的だったと思います。教育体制がないということが、逆に自分の成長の助けになりました。人に聞くのではなく、自分で調べて自分で書くというマインドを育ててくれたんです。

最初の1カ月はRSpecのテストをひたすら量産し、2ヶ月目からクラウド会計ソフトfreeeの固定資産機能の実装を担当することになって、初めて本格的にRailsに触れるようになりました。半年ほどで、銀行やクレジットカードの明細データの自動解析アルゴリズムや、300以上の口座との同期機能を作りました。Railsのフレームワークにも慣れ、コードを書くスピードが上がって、どんどん楽しくなっていきましたね。

Web業界のスペシャリストたちから刺激を受ける

私がエンジニアとして成長できたのは、一緒に働く人たちの猛烈なエネルギーや、会社の急成長に必死になってついていったからだと思います。

入社当初、まだfreeeがリリースされる前は、8時半からだいだい深夜の2時、3時までひたすらコードを書いていました。食事は昼飯のみで、休憩もとらず、仕事が終わると夜飯代わりにしょっちゅう飲みに行きました。飲みながら将来の会社の夢など、あーでもないこーでもないと話していました。楽しかったですね。それで翌朝は8時半に出社。自分でもよく続いたなと思います。

よく「全くの素人がこれだけの短期間でプログラムを書けるようになってすごい」と言われるんですが、才能ではなく、ひたすら開発に集中していた結果だと思っています。気づけば最初の1年間で25万行コミットしていました。

1年経つ頃には、Web業界でバリバリに活躍していた優秀なエンジニアが、続々と入ってくるようになりました。これまでプロジェクトマネージャーなど管理系の仕事をやってきた人や、エンジニアとして名の知られた人が「世の中に価値を提供できるコードが書きたい」と入ってきてくれました。

長年開発をやっている人には、その人ならではの開発の勘所がありますから、刺激されることが多かったです。その人が新たに書いたコードを読んで、その人がつけたコードレビューのコメントを読んで、どんどん吸収していく。そういう姿勢が大事だと思います。

会社らしい組織への成長

人が増えてくるにつれて、技術者同士、あるいは技術者とビジネスサイドのコミュニケーションを、もっと密にしていかないといけないと自覚するようになりました。この1年で社員が急速に増えたことで、人と人との関わりで仕事をするんだという意識と、そのやり方が身についたような気がします。人を巻き込みながら仕事をすることの大切さですね。

freeeのリリース当初は3人しかいなかった。3人が全員開発していて、バグ潰しは主に私が担当していました。プログラマでバグが好きな人なんていないと思うけれど、リリース後に必ず出てくる大量のバグをひたすら潰していた経験もあって、バグへの思い入れは人一倍あるんです。今まで見たことないタイプのバグに遭遇するともう興奮します(笑)。

それで、結構好きでバグを直したり、全体のバグの管理をやっていたわけなんですが、他にもリリースを管理したりいろいろやっていたので、コードを書いている時間が半分くらいに減ってしまったんですよね。これはだめだ、と思いました。

それで、どんどん人に仕事を押し付けることにしました。興味がありそうな人を引き込んで、徐々に自分はフェードアウト。押し付けられた人は大事な責任を負うから、どんどん自分で考えるようになって、会社に深くコミットしていってくれます。そして自分はコードを書くことに集中できる。

こうして、自分が持っていたタスクを切り離し、自分がいなくても改善の循環が回っていくのを見た時は、これが組織の強さなんだなと強く感じました。

ユーザーの本質的なニーズは何かを常に議論できる開発風土

私はプロダクトの開発初期から携わっていて、多くの機能を知っているので、今はアプリの基盤開発から新機能の搭載まで、人が足りないところにどこにでも首を突っ込んでいます。

最近だと、ワンクリックで給与計算ができる「クラウド給与計算ソフトfreee」を、何もない状態から1カ月でリリースまでこぎつけました。ゴールデンウィークが1連休になりましたが(笑)、どうしても仕上げたかったプロダクトだったので、チームの仲間と一緒に燃え上がりました。今でもチームとは妙な連帯感を持っています。

新機能を追加するときの注意点として、単に他のソフトがその機能を持っているからという理由だけでなく、常に「その機能が解決すべき真の問題点は何か」を考えるようにしています。ほかにもあるからこっちにも欲しいという声をそのまま聞くのではなく、より本質的な解を目指すことが大切だと思っています。

社内的にもビジネスサイドからの要望に対して、「その機能は本当にユーザーにとって価値があることなのか」と開発チームが話し合うことがよくあります。お互いに、ユーザーの本質的なニーズをめぐって議論する機会がある。だから面白い。みんな“プロダクト愛”の濃い人ばかりなんです。

私は、エンジニアとしては多少仕事をこなせるようになりましたが、一人前というにはまだまだです。コンピュータや情報通信の基礎的な知識や、仕事で使わない技術では知らないことがたくさんあるからです。

ですが、freeeに対する思い入れ、freeeで世の中を変えていくんだという強い気持ちは常にもっています。これからもこのプロダクトと共に、エンジニアとしても社会人としても成長していこうと思っています。

最後に、いつかやってみたいなと思っているのは、せっかく何年か法律を勉強していたので、法律とITを組み合わせた、全く新しい法律系のソフトを作ることです。たまたま新しいクラウド会計ソフトを作る会社に入って、そのあと新しいクラウドの法律ソフトを作れたら、なんだか面白そうですよね(笑)。

<プロフィール>
平栗 遵宜氏
freee 株式会社 ソフトウェアエンジニア
1981年生まれ。東大法学部卒業。2012年、10年近いニートライフに終止符を打ち、31歳で初めての会社として選んだのがfreee。プログラミング未経験だったが、ひたすらソースコードを読み解くことで技術を身につけ、「クラウド会計ソフトfreee」のリリースとその後の急成長に貢献。
社内部活動は卓球。COOの接待卓球が得意。

(執筆:広重隆樹/撮影:佐藤聡)

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