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Life is Techに続き、橋本善久氏が仕掛けるのはアーティスト集団のプロデュースとマネジメント支援

2015.01.26 Category:インタビュー Tag: ,

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スクウェア・エニックスから独立し、昨年末にライフイズテック執行役員CTO就任で注目される橋本善久氏。

その橋本氏が設立したリブゼント・イノベーションズ株式会社の活動や、顧問を行う企業での活動を紹介する。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

仕事に活気を、人生に潤いを

橋本氏は、2014年春にスクウェア・エニックスを退職すると、リブゼント・イノベーションズ株式会社を設立、新たな事業展開に一歩踏み出した。リブゼントは生活(Life)、仕事(Business)、娯楽(Entertainment)の3つの言葉の合成語。

この3つのテーマがクロスする領域における、ソフトウェア開発、企業向けコンサルティング、イベントの企画・運営などを主な事業としている。「仕事に活気を、人生に潤いを。」が会社としてのモットーだ。

リブゼントのメイン事業は、ソフトウェアコンテンツ事業。個人・企業向けのスマートフォンアプリやデスクトップ・アプリの開発と販売を行う。まずは「仕事に活気を」というテーマに沿うプロダクトの一つとして、現在、タスク管理やスケジュール管理などの仕事効率化系のスマートフォンアプリの開発を進めている。

リブゼントのもう一つの柱は、前編でも触れたコンサルティング事業。その内容は、技術ディレクション、アプリやサービスの設計・開発支援から、プロジェクト・マネジメントやアジャイル導入支援、人材採用・育成支援にまで及ぶ。

「プロジェクトの多くは、どうにも終わる気配がない、品質が上がらない、生産性が上がらない、何から手をつけていいかわからないなど、さまざまな悩みを抱えています。こうした悩みを聞いて、課題を洗い出し、タスクを分解し、一日あたりの作業時間を正しく見積もるなど、こんがらがった問題の交通整理をするのが私の役目だと思っています」

プログラム禁止を宣言し、プロジェクトを立て直す

スクエニ時代、あるプロジェクトの立て直しに途中から参画したときに、橋本氏は「今日からプログラム一切禁止」と宣言。皆で課題を洗い出し、タスク計画、人員計画などを見直すことに注力した。再度プログラミングに着手するまでの2カ月間をプロジェクト再構築のプロセスにあてたという。

「開発者にとっては、デスマーチに陥って先が見えなくなった状態ほど苦しいものはない。一見面倒くさくて遠回りだと思われがちですが、プロジェクトを綿密に設計し直し、それを一人ひとりの計画にまで落とし込むことで、エンジニアは心身ともに救われるようになります」

セガやスクエニで積み上げた、ソフトウェア開発マネジメントのノウハウを、今後はゲーム業界に限らず、あらゆる分野の企業に適用させようというのだ。

「プロジェクトが失敗するのは、アジャイルやウォーターフォールなど手法の違いやその導入プロセスの問題などとされがちですが、代表的な問題を挙げれば、以下のような基本的な内容にほとんど集約します。煎じ詰めるとディレクションとマネジメントの問題が大半です」と橋本氏は言う。

  • プロジェクトのリーダーに明確なビジョンや方法論がない
  • プロダクトのサイズに合った必要十分な調査・設計が事前にされていない
  • プロダクトのサイズに合った必要十分な計画が事前にされていない
  • 制作途中で問題発見を積極的に行わない
  • 見つかった問題に対して適切な対処が施されなかったり、問題が深刻化するまで放置されたりする
  • コミュニケーションが適切に行われていない
  • チームビルディングや文化形成がうまく行っていない

「一定規模以上の組織になると、どうしても当事者意識が薄れ、どこかしら他人事感が出てしまう。複数のチームがコラボレーションする場合も、自分たちがどこまで他のチームの問題に首を突っ込むべきか迷うことがあると思うんです。両者がそうやって手を出せない、出さないところで思わぬミスが発生する。

お互いの意識がオーバーラップしながら仕事を進めることが必要ですが、それをどのように実践するかは必ずしも簡単なことではない。私自身が、良いプロダクトやサービスを生み出すためのよりよい解答を見つけたいと思っていて、様々な企業、プロジェクトに関わることで、いろいろな角度からの貢献をしながら、多くの経験を積んでいこうと考えました」

未来につながるクリエイティブの“種”を守り、育てたい

前回はライフイズテックでの活動について紹介したが、橋本氏が役員として内側から関わる企業がもう一つある、コンセプトアートやマットペイントを創造する「INEI(陰翳・インエイ)」という会社だ。

「映画やゲームを制作するとき、特にハイエンドなものを作るときには、そのコンテンツがもつ独自の世界観を、コンセプトアートと呼ばれるデジタルペインティングで表現することがあります。INEIは日本では数少ない、コンセプトアートの専業企業。INEIはアーティストの集団であり、素晴らしい絵を描くことは得意ですが、タスクやビジネスのマネジメントの方法にはより良い答えを求めていた。そこでINEIの富安からの相談に乗っていました」

INEI代表の富安健一郎氏はナムコのデザイナーを経て独立、その後、数多くのゲーム、映画、広告、TV、イベントなどの仕事を担当してきた。代表作には、コナミの「メタルギア ライジング REVENGEANCE」、カプコンなどが制作した「バイオハザード ダムネーション」のコンセプトアートがある。

1月からは「INEI SHOWCASE」と呼ばれる、INEI独自の世界観を表現したアート作品集がWeb公開されている。




▲INEI SHOWCASEのアート作品より

微妙で繊細な色や濃淡の変化を含んだ、独自の陰翳表現は「世界で十分通用するものだ」(橋本氏の評)。2015年1月には、他2名のコンセプトアーティストと共著で『ファンタジーの世界観を描く コンセプトアーティストが創るゲームの舞台、その発想と技法』という、国内初の本格的な技法解説書を上梓する。

「コンセプトアートはゲームや映画などクリエイティブ作品の種となる重要なプロセスの一つなんです。これが枯れてしまうと未来のクリエイティブの源泉の一角が日本から断たれてしまうかもしれない。それを守り、育てたいという思いもありました」と、橋本氏はこの企業にかかわる理由を語る。

経営へのアドバイスは以前から続けていたが、最近は執行役員/プロデューサーの肩書きで、より深くこの会社にコミットしようとしている。

アーティスト集団のプロジェクト管理に挑戦

ゲーム会社でアーティストたちに仕事を発注していた橋本氏の経験は、ここでも活きる。発注側の意図や心理をアーティストに“通訳”することで、互いのコミュニケーション・ギャップを埋めることができるのだ。

「日々のタスク管理にも、スクラム(SCRUM)のような手法を導入しています。社内のサーフボードに付箋を貼り付けて、タスクの可視化をしてみたら、意外と好評でした。アーティストの場合、あまりカチカチに詰めてもモチベーションは高まらない。ですからここでのスクラム導入は、作業スピードの短縮化というより、問題点の共有化によるコミュニケーション密度の向上に主眼が置かれています」

▲タスクが書かれた付箋を貼りつけている社内のサーフボード

ゲーム業界での経験を、教育ビジネスの新規サービス開発やアーティスト集団のプロジェクト管理といった未知の課題に活かす。橋本氏の挑戦とその成果に期待したい。


リブゼント・イノベーションズ株式会社
代表取締役社長 橋本 善久氏

1973年愛知県生まれ。東京大学工学部卒業後、株式会社セガでプログラマやゲームディレクターとして家庭用ゲームソフト開発に従事。その後株式会社スクウェア・エニックスのCTO/R&D部門長として全社技術の推進、開発マネジメントの改善、技術者採用促進と育成等に努める。2014年春よりリブゼント・イノベーションズ株式会社を設立。2014年12月より、ライフイズテック株式会社 執行役員CTOを兼務。2015年1月より株式会社INEI 執行役員プロデューサーを兼務。
代表作は「ソニック・ワールドアドベンチャー」(セガ/ゲームディレクター兼技術ディレクター)、「Agni’s Philosophy – FINAL FANTASY Realtime Tech Demo」(スクウェア・エニックス/プロデューサー兼ディレクター)、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア」(スクウェア・エニックス/技術ディレクター)など。

(執筆:広重隆樹/撮影:平山諭)

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