CodeIQ MAGAZINECodeIQ MAGAZINE

【アカツキ×Aiming対談】ゲーム会社のCTOが求める「愛あるエンジニア」とは?

2015.03.12 Category:インタビュー Tag: , , ,

  • 15
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

スマートフォンゲームの開発を主力事業に据えて急成長を続けるアカツキとAimingのCTO対談。

後編は、エンジニアのチャレンジを支える開発環境や文化をどう作っていくか、そしてどのようなエンジニアを求めているのかについて語り会ってもらった。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

エンジニアのチャレンジを支える環境・文化とは

──前回でもお話いただいたように、変化対応力を持つエンジニア集団を作りたいというのは、お二人とも同じだと思います。そこで根本的な問い。果たして高いレベルのエンジニアを複数育てるということは、可能なんでしょうか。

田中:思考は現実化しますから(笑)。そうしようと思えば、そうできる。エンジニア一人ひとりに、自分たちがそういう人になれるんだということを信じさせる、その文化や環境をつくるのがCTOの役割じゃないかな。

小林:スーパーエンジニアでないと変化対応ができないか、というとそんなことはない。僕は本質的には変化対応力の源泉は好奇心だと思ってます。子供の頃に新しいオモチャにワクワクした経験があると思いますが、大人になると忘れてしまう。だからこそ、「いや君はオモチャで遊んでいていいんだよ」と言ってあげる。そういう環境を作ってあげる。

例えば、C++のエンジニアがRubyを書き始めても、すぐにはうまく書けないけど、「それでいいんだ、C++を知りつつ新しい言語を習得しようという君の方向性は正しい」と、稚拙であることを含めて新しいチャレンジを認めてあげる。

逆に、「僕はRubyエンジニアなんで……」とか言ってゲームクライアントを書こうとしない人もいますし、クライアント側のエンジニアが「僕らの仕事は終わりましたけどサーバーAPIができてないので動きません」、みたいな他責がケンカの火種になることもありますよね。でも実は両方できると超活躍できたりするわけですよ。

両方できれば、自分で開発を完結することだってできるわけです。実はこんなかんじで技術的なカバーエリアが広がった人は、次の技術トレンドの変化が来た時に「要らない人」になってしまう確率が減ってるわけです。 これが組織的に積み上がったものが、組織の変化の対応力である、と考えています。

──エンジニアにとって新しい言語を覚えるのは、一つのチャレンジです。それを促す仕掛けみたいなのはありますか。

小林:まず、個人レベルでの技術的チャレンジを承認することでしょうね。さらに、サーバーとクライアントとか、言語が違うけど協働すべきものを作る人達の席を近づけて一緒のチームにしちゃうってのも一つの手かも。

あと、タスク管理を分割すると、その分けたところでケンカになったりするので、なるべく分割しないようにするといいと思います。それをあなたにとっての「あちら側」ではなく、責任を負うべき「こちら側」にしてあげると言うか。こういうことによって知識が混ざる。

田中:ただ、プロジェクトが30人ぐらいになると、全員一緒というわけにはいかない。そこで僕らは、オープニングシーンとか戦闘シーンとか、シーン別・機能別にチームを分けるようにしています。それぞれのシーンに、企画者もディレクターも、サーバーもクライアントのエンジニアもいて、一緒に仕事をする。そういう分け方をすると、そのシーンについての振り返り作業が共有化されていいんです。

エンジニアを刺激するという点では、社内勉強会をよく開いています。最近は、『Understanding Computation』(Tom Stuart著)の輪読会をやっています。それと「月曜Unity会」というのもありますね。毎週Unityで何か好きなものを書いて発表する。

小林:ああ、クソゲー開発コンテストというのがウチにもありますね。(笑) あと勉強会はウチも積極的にやってます。 読書会では、『リーダブルコード』とか。 僕が主催したものだとClinton Keith の『Agile Game Development with Scrum』とか。それから、セキュリティの話とかソフトウェアに関する法律の話など、職種を越えて共通の知識になるようなテーマの勉強会もありますね。

こうした勉強会では社員がチューターになることが多いですね。けっこう社内にエキスパートがいるんだけれども、本人がそれを自覚していない場合が多くて、「おめえ、すげぇんだから、喋れよ」と言ってけしかけたりしてます。

田中:「けしかける」ってのもCTOの一つの役割ですね。輪読会、勉強会をやると「これってあの本に書いてあったよね」というふうに知識が共有化されているから、会話がスムーズになり、それを前提で仕事を進めることができるのがいいです。

アジャイル開発の成否を分かつもの

──お二人とも、高品質・効率的なプロダクトを作るために、アジャイル開発を取り入れていると思うんですが、うまくいっていますか。

田中:アジャイルではドキュメントよりも動くコードが重視されるけれど、ただ、ドキュメントが不要というわけではない。コードとドキュメントのバランスをどうするかが、最近の悩みどころではあります。

小林:かつてのSIerがやっていたような、顧客からお金をいただくために、紙のドキュメントを何センチも積み上げるとか、そういうのは意味がない。「動くコードが大切」というのは、そういう悪習を牽制するための言葉ですよね。ただこれは、ともすれば「俺はコードを書いたからいいんだ」とドキュメントを書かない人のいいわけとして使われてしまう。これはよくない。

田中:API設計のドキュメントがなければ、クライアント側はコードを書けないし、ドキュメントは絶対必要なんですけどね。

小林:アジャイルの失敗の原因は多くの場合、自分の組織の特性を考えず、教科書通りのアジャイルをそのまま当てはめようとすることにあると思うんですよね。その手の失敗はウチでもずいぶんやりました。現場を見ずに手法を強制しちゃうのは、アジャイル嫌いを増やすだけですし、そもそも強制したり手法を固定化してる時点でアジャイルじゃない。結果、プロジェクトの失敗原因をアジャイルのせいにして終了、みたいなことになります。本質的にはゴール設定も手法も定期的に見直して柔軟にやろう、というのがアジャイルですから。

田中:『アジャイルサムライ−達人開発者への道』(Jonathan Rasmusson 著)に、「狙え、構え、撃て」と書いてある。その順番はけっして間違えてはいけないけれど、だからといって、SCRUMでなければだめとか固執する人は、わかってないんじゃないかなと思う。

小林:ウォーターフォールの歴史を勉強すると、アジャイルで言われていることとおなじことが言われたりしますよね。だから、プロジェクトの失敗の原因をウォーターフォールなりアジャイルなりの手法に求めるのは愚の骨頂。問題はたいてい開発手法以外のところにあるものです。

「愛のあるエンジニア」を探し求めて

──ところで、CTOとしては技術者採用にも責任と権限があると思うんですが、採用は苦労していますか。

田中・小林:苦労してますよ。

小林:東京は苦戦してますが、ライバル会社も多いのでしょうがない。じゃあどうするかですけど、うちは勉強会をやって、来た人に声をかけて入社に結びついた例も多いですね。勉強会に来ている人はそれだけアンテナが高いということだし、オープンにやっていくというウチの社風にも合っています。

田中:エンジニアスキルがいくら高くても、ウチの文化に合わないと落としちゃう。社長が、「家族を大事にしていない人はだめ」とか、結構エモーショナルな部分で理想が高いものですから(笑)。人間への愛でもコードへの愛でもいいので、愛を語れるエンジニアに会いたいんだけど、その方法がなかなか……。

──エンジニアですから、当然コードを見て採用しますよね。

小林:最低限のエンジニアリングスキルは確認したいので、コードは見ます。ただそれ以上に、その人が本当にプログラミングなりモノ作りなりが好きなのかを僕らは知りたい。なぜなら、コーディングとかゲームを作ることになんらかの強いモチベーションを持っていないと、これから生き残っていけないですから。なので、アウトプットから透けて見える、その人の「好き」の方向性や程度を知りたいんです。

面接で「ゲーム作りたいです!」なんてのは誰でも言えるし、プレゼンだけうまい人が高く評価されちゃったりするけど、そういうのが嫌なんですね。この人、夏休みすべてを費やしてこのゲーム作ったんだなとか、そういうのって伝わりますよね。

田中:情熱のある人という条件はウチも同じですね。「GitHubにコードがあるなら見せてくれ」と必ず言いますけど、それはコードの良し悪しというより、なぜこのコードにしたのか、もっとよくするためにはどうしたいと考えているのかを知りたいから。そういうことは、面接でコミュニケーションを重ねて初めてわかることも多いです。

小林:僕の考えの根っこには「コーディングスキルは教育できるけれども、情熱やモチベーションは教育できない」ということがあります。後者をなんとか見抜きたいんですね。

田中:アカツキでよくいうところの「内発的な動機」っていうやつですね。これが高い人は、どんな仕事でも高いレベルを達成できると思います。

──対談の最後に、今日の出会いの感想を。

田中:Aimingさんって、開発者クレドとか見ていてすごいなと思ったけれど、きょう話してみてもっとすごいなと実感。外にこんな強敵がいると思うと、怖いぐらいです(笑)。

小林:アカツキさんのことはずっと意識していたんですよ。今日話してみて、すごく共感できました。いいものを作ろうとして組織のあり方を模索していくと似たものになるんですかね。その共通項の部分を確認して共感できたので、ほんとお会いできてよかったです。

 ⇒前編「スタートアップのCTOが語るエンジニアリングチーム文化の作り方」を読む!

対談者プロフィール

小林 俊仁氏
株式会社Aiming
最高技術責任者 開発グループ ゼネラルマネージャー

1977年生。京都大学大学院在学中からオンラインゲームの開発に関わる。2003年にコミュニティーエンジン社取締役に就任、北京に移住して中国版プレイオンラインの設計・開発、モバゲータウンの中国ローカライズ(加加城)等に関わる。2011年6月にAimingに移籍し、2013年5月から現職。

田中 勇輔氏
株式会社アカツキ
SG Guild/CTO ハッカーLv.6

1984年生。専門学校卒業後、ユーザー系SIerでERPや社内技術標準化に携わる。Rubyが大好きだったことと、「世界をハッピーにする」という熱いマインドに惹かれ、2012年アカツキに入社。Rubyとインフラが専門領域で、アプリケーション開発と並行してアカツキのインフラ基盤の整備を担当。

(執筆:広重隆樹/撮影:刑部友康)

自分の書いたコードを誰かに評価されたいエンジニアは、けっこう多い?

ITエンジニアのための実務スキル評価サービス『CodeIQ』で出題されている「コード銀行」問題に挑戦すると、あなたのコードが評価されます。

評価(1)出題者からの評価  ⇒評価フィードバック例を見る

  • 企業ではたらくという観点からあなたのコードをチェックします
  • フィードバックされた観点をふまえてコードを書くと世の中の企業にとって「いいコード」が書けるようになります

評価(2)企業からの評価  ⇒評価フィードバック例を見る

  • 「あなたと一緒にはたらきたい」という企業からスカウトが届きます
  • あなたのコードが社会でどこまで通用するか、リアルな評価が得られます

興味を持った方はこちらからチャレンジを!

  • 15
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

■関連記事

まつもとゆきひろ氏・笹子CTOが「メディカルケアステーション」で目指す医療・介護業界の改革とは... ソーシャル医療プラットフォーム「メディカル・ケア・ステーション」とは エンブレース(embrace)には「抱きしめる」という意味がある。医療介護に特化した情報流通とコミュニケーションを通じて、患者や家族を「抱きしめるように」支えていくというのが、日本エンブレースの企業理念だ。 事業の柱は、医療者...
池澤あやか、セレスCTOのレジュメ添削を受けて、実力がちゃんと評価されるコツを学ぶ!... ITエンジニア向けの年収確約スカウト転職サービス「moffers」 レジュメに登録されたスキルや経験プロジェクトに対して年収確約スカウトを届けることで、優秀なIT人材がより高評価を受け、本来の能力を発揮することを目指した転職支援サービス「moffers(モファーズ)」。 現年収ではなく、希望年収...
LINE CTO朴イビン氏に聞く──LINEはクラウドAIプラットフォーム「Clova」で何をするの... LINEとNAVERの技術を集大成である「Clova」と「WAVE」 LINEは2017年9月28日、渋谷のヒカリエホールで「LINE DEVELOPER DAY 2017」を開催した。 コミュニケーションアプリ「LINE」をはじめ、LINEのさまざまなサービスにおける技術領域でのチャレンジや社...
アニメ・漫画・ゲーム脚本で活躍中の深見真が語る「キャラクター・ストーリー作りの極意とは?」... 富野由悠季さんに褒めてもらえたドラマ企画 深見氏は、大学在学中から小説を書き始めている。 「正直に言って、他にやりたいことがなかったんです。アルバイトをしたり、面接を受けたりしましたが、どうにもピンと来なかった。書き始めたきっかけは、すごくぼんやりしたものでした」 小学生の頃から、文章を書...
福岡から世界に通じるIoTビジネスを──スカイディスクCTO大谷祐司のキャリアはこうして作られた... 福岡は「スタートアップ都市」。テクノロジーベンチャーがいま熱い 2013年に創業されたスカイディスクは、福岡発のIoTスタートアップだ。 IoT向けの脱着式センサ「SkyLogger」とAIクラウドサービス「SkyAnalyzer」、さらに人工知能基盤「SkyAI」を組み合わせ、流通や農業、工場...
アプリで治療する医療の未来を切り拓く─医師を兼任するキュア・アップCTO鈴木晋は何を夢見るのか... JavaScriptへの愛を熱く語るエンジニアは現役の医師でもあった 最近になって、スマホ・アプリによるガイダンスが生活習慣病の予防などに効果があることが知られ始めているが、キュア・アップはこうした考え方に基づき、ニコチン依存症治療用アプリ「CureApp禁煙」を開発・提供する医療系スタートアップ...

今週のPickUPレポート

新着記事

週間ランキング

CodeIQとは

CodeIQ(コードアイキュー)とは、自分の実力を知りたいITエンジニア向けの、実務スキル評価サービスです。

CodeIQご利用にあたって
関連サイト
codeiq

リクルートグループサイトへ