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アパレル業界で学んだ自分ブランド作り。“遅咲きプログラマ”山崎大助氏の「仕事の流儀」前編

2015.06.29 Category:【連載】ギークたちの『仕事の流儀』 Tag: , , , , ,

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Microsoft MVPであると同時に、Web関連のプログラムの開発者、技術書籍執筆、教育者としても活躍する山崎大助氏。

ITに触れたのは28歳と遅咲きだが、だからこそ「自分はどういうエンジニアになるべきか」がよく見えていた。

エンジニアとしてのこれまでの道のりや、4月に開講したエンジニア養成学校「G's Academy TOKYO」の話などを聞いた。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

IT未経験者はどうやって業界の門をこじ開けたか

僕は自称“遅咲きのプログラマ”。28歳まではアパレル業界で、ショップの店長をやっていました。“売れるカリスマ店長”ではありましたが、プレッシャーもきつかった。

その日の売上げを達成できないと、本社に呼ばれ、終電間近までこってり絞られました。過酷労働。それで体を壊して入院することになったんですが、なんとその会社、休業補償がないんですよ。今でいうブラック(笑)。

「会社って、何もしてくれないんだな。自分が倒れても、それに替わる人がきっといるんだな」と、その時つくづく思いましたね。自分でしかできない仕事、自分の腕一本で自立できる仕事、他の人には容易に取って代わられない仕事を目指そうと、転職を決意しました。2000年の頃です。

これからの時代はパソコンだと思ったのですが、なにせその頃はキーボードも満足に打てない全くの素人です。メールの設定にも数カ月かかったし、Wordで文書一つ作るのも青息吐息です。畑が違う、というのはこういうことですよね。

自宅で自学自習でやるより、これは仕事を通して覚えたほうが早いなと思って、就職先を探すんですが、こんなITど素人を雇ってくれる会社なんてありません。

50~60社受けて、全部不合格です。「営業職なら君に打ってつけだよ」と言ってくれる大手上場会社もあったんですが、やはり営業ではなく、技術職として身を立てたいと考えていたから、それは断りました。

唯一、ITに近いところで、企業のPCインストラクターの仕事になんとかありつくことができました。エンジニアはたくさんいるんだけど、人にわかりやすく教えるスキルを持っている人はなかなかいない、というのです。

アパレルショップ店長としての経験がありますから、人とのコミュニケーションは得意。なんとかその会社で、必死でITスキルを磨きました。

PHPマスターで、最初の成功体験

それからいくつかの会社を転々とするんですが、コーディングという意味で一番実りが大きかったのは、5~6年前まで勤めていたSIerでのSE経験でしたね。

例えば大手携帯通信事業者のキャンペーンサイトの構築の仕事がありました。Flashで作成したキャラクターが画面を走り回る、それを裏で制御するシステムをPHPで書きました。

今でこそWebSocketを使えば簡単にできるけど、当時はFlash専用のコミュニケーションサーバを立てて、ガリガリとプログラムを書いていました。

PHPも最初の日本語解説書が出たぐらいの頃ですね。実は、その前にPerlに取り組んでいたんですが、これがさっぱりわからない(笑)。

ところが、PHPは簡単だったんですよ。この時、PHPという一つの言語をしっかりマスターしたことが、結果的にはよかったと思います。一つの成功体験がその後の自信につながる。もしPerlしかなかったら、僕はそこで挫折していたかもしれない。

自分たちの技術をどう売るか、これもSEとしては重要な役目です。アパレル店長時代、僕は自分の中で毎日、売れ筋のコーディネイトというものを決めていました。「今日はトップとボトムはこのセットで売っていこう。そのためのセールストークはこんな風に展開しよう」。それはアパレルや、自社ブランドのことをよく知っているからこそ、できたことなんですね。

ところが、まだ技術力が浅いまま、IT業界で同じことをしようと思っても難しい。ついつい顧客の要望を丸受けして、あとで開発チームがえらい目にあるということもよくありました。

ITをしっかり理解していなかったから、どういう工程の組み立て方をすればいいか知識がなかった。戦える状態じゃなかった。サッカーでいうと、たんなる玉蹴り、ムダ走り状態だったんです。

異業界・異業種からIT業界に来る人は必ずこの壁にぶち当たる。前職の経験の半分は活かせるけど、前職での流儀がそのままいけるわけではない。どこかで発想や考え方を変えないといけない。ということは、現在のデジタルハリウッドや「G’s ACADEMY TOKYO」の学生にもよく教えることです。

自分の名前でフリーソフトを世に出す

SIerで何年か経験を積むうちに、次第に自分の技術には自信を持てるようになりました。ただ、周りの人と同じようにできるだけでは、やはりいつかは誰かに「取って代わられてしまうかもしれない」。

その不安や危機意識というのは常にありましたね。エンジニアとしての自分の売り物は何なのか、「山崎大助」という人間が放つブランド力とは何なのか、そんなことを考えるようになりました。

ブランド確立のための一つの手がかりになったのが、フリーソフト「AIR Note!」の開発でした。これは当時の職場の同僚たちが、PCの前で困っているのを見て思いついたソフトです。

やりたい作業のたびに、エディタやらブラウザやら複数のアプリを立ち上げ、いろんなサイトに行かなければならない。その面倒さを解消するビジネスマンのためのお役立ちツールを一つにまとめたものでした。

スケジュール管理、メモ帳、翻訳・校正作業、YouTube視聴、Wikipedia検索などを、常駐する一本のAIRアプリだけで全部こなすことができます。コントロール+Cでコピーした履歴が全部残るとか、一日のスケジュールをPDFで出力できるとか、サーバーが落ちていないかどうか自動的にpingを打って把握できるとか。

職場の昼休みの時間などを利用して、1週間ぐらいで完成しました。会社もそのあたりは鷹揚で、「趣味のフリーソフトなら、好きに書いていい」と許してくれました。

タイミングもよかったんでしょうね。アドビがAIR技術を発表した頃で、AIRを活用した作品を公募し、それをアドビ・ギャラリーで公開していました。私が2008年に「AIR Note!」を公開すると、かなりの数のダウンロードがあって、パソコン雑誌でも紹介されるようになりました。

発信しなければ、誰もその人を認めてくれない

それで価値観が変わりました。ある一定のレベルですごいコードを書いたら、それはそれで評価されるかもしれないけど、人から認められるためには自分からアピールしないといけない。

何かを作って発信していかないと誰も認めてくれない。自己満足ではない、アウトプットの重要性ということをそのとき痛感したのです。

今でこそ、GitHubにコードを置くのは当たり前、HTML5などさまざまな技術コミュニティがあって、業界の人たちの企業の枠を超えて活動している。そうしないと情報も集まらないし、エンジニア同士の交流も深まらない、ということに今はみんな気づいているんです。

ただ当時はまだまだ。特にこの業界でSE的な業務をしている人は、あまりアウトプットしなかったから、僕は珍しい存在だったと思います。

ただ、「AIR Note!」はね、会社の仲間のために書いたのに、みんな使ってくれませんでした(笑)。最初から「そんなの、誰が使うんだよ」と否定的。

なんでだろう。開発者同士だからこそ、あいつが書いたソフトなんて使うもんかという意地みたいなのが、あったんでしょうかね。でも、他の見知らぬ人たちが使ってくれて、バージョンアップの要望とかもたくさん寄せてくれたんですよ。

そこでまた僕は新しい教訓を得るんです。今もセミナーなどでよく言うのは、自分がやりたいことがあるんだったら、「人の意見は聞くな」ということ。

たとえ周囲に反対されたとしても、自分がやりたいと思うんだったら、人の意見に惑わされずにやるべきだ。どんなに細かく予想しても先が見えない世の中。自分の心の声を信じてやりきるということが大切だ。
特にエンジニアであればなおさら、そうだと思うんです。

──後編「ハートなき技術解説は、人に届かない。」に続く

山崎 大助(やまざき・だいすけ)氏

デジタルハリウッド大学院講師。2015年にG’s Academy TOKYOの主席講師および大妻女子大学の非常勤講師に着任。著書に『jQueryレッスンブック』『レスポンシブWebデザイン「超」実践デザイン集中講義』など。世界で10人しかいないMicrosoft MVP:Bing Maps Developmentの一人。
雑誌、Webメディアでの連載執筆のほか、エンジニア向けイベントにもたびたび登壇している。

──執筆:広重隆樹/撮影:刑部友康

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