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【MROC×自動テキスト解析×可視化】ユーザーの感情までを迅速に分析する「ココロバ」は、こうして生まれた

2015.08.03 Category:技術コラム Tag: , , , ,

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人々のライフスタイル、ライフサイクルに応じてさまざまなサービスを展開するリクルートグループ。
その商品・サービス企画で有効な役割を果たしているのが、リクルートテクノロジーズによるオンラインコミュニティを活用したマーケティング調査基盤「ココロバ」だ。
その狙いとそこに実装されている最先端の技術とは──
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

オンラインコミュニティを形成。その議論の中から本音を探る「MROC」

企業のサービス開発は、ユーザーニーズを探る綿密なマーケティング調査から導かれている。ただ、従来のマーケティング調査は、仮説を立ててアンケートを実施し、その結果を検証する定量調査がほとんどで、リクルートグループの場合もそうだった。

一方で、調査の手法としては少人数グループインタビューや、1対1のデプスインタビューなどの定性調査もある。

だが、これには時間もコストもかかる。ネットサービスにおける厳しい競争には勝ち抜くためには、短期間で実装でき、かつ膨大なユーザーの声から、サービス開発に直結するような重要なデータを的確に取り出すことのできる、新しい手法が望まれていた。

「ユーザーニーズの変化や多様化のスピードはますます早くなっており、単純な定量調査や定性調査では真のニーズを見抜くことが困難になっています。そんなおり、より早くより深くカスタマーを理解するための方法として、MROC(Marketing Research Online Community;エムロック)が有効ではないかと考えるようになりました」と言うのは、リクルートテクノロジーズ(RTC)でマーケティングリサーチを担当する坂本千映子氏だ。

▲株式会社リクルートテクノロジーズ ITマネジメント統括部 サイトプランニング部 マーケティングリサーチグループ グループマネージャー 坂本千映子氏

MROCとは、オンラインコミュニティ上で展開されるメンバー相互のディスカッションなどを通じて消費者インサイト(本音)を探る試み。海外では、スターバックスが顧客コミュニティに社員50人を参加させ、店舗や商品開発に役立てた事例や、ナビスコがダイエット中の女性だけを集めたコミュニティで消費者の隠された本音を聞き出し、新商品開発につなげた例などが有名だ。

MROC(Marketing Research Online Community)
オンライン上にカスタマーを数百人あつめ、数週間~数か月の間対話をしながら意見をリアルタイムで深堀しながら理解する手法。

大量の定性情報を分析するための仕組みや手法が不可欠

すでに「Airレジ」「勉強サプリ」「タウンワーク」「雪マジ」などの各サービスにおいてオンラインコミュニティを作り、プロダクトやイベント開発に役立ててきた。

例えば、全国のスキー場でリフト券が無料になる19歳限定キャンペーン「雪マジ!19」では300人規模のユーザーコミュニティをつくり、半年にわたって意見を聞いた。そこで顕著だったのが「ゲレンデで食べる食事が美味しくない」という声。

そこで、リクルートテクノロジーズのチームは舞子スノーリゾートなどと協業で、ゲレンデのカレーを調査。オリジナルのカレー商品を開発し、試食会を経て、数量限定で実際に販売される商品となった。

    ▲アンケートから商品開発したオリジナルの「ホワイトカレー」

「こうした手法は調査専門の企業でも行われていますが、リクルートは事業会社なので、ユーザーの声が実際の製品やサービスへ反映される確度がより高い。また、社内ではマーケティングリサーチグループとサービスUI/UX改善チームが隣り合うように協業しているので、ユーザーの声がサービスに反映されるスピードも早い。それだけ、ユーザー側も本音を出しやすくなるのではないでしょうか」と、坂本氏は語る。

ただ、こうしたコミュニティで交わされるコメントは膨大。テキストメッセージだけでなく、「こういうカレーがいい」と、ユーザーが絵や写真で投稿することも多く、それらの分析を人力で処理するのはとうてい不可能だ。

「大量のカスタマーと接点を持ちながら、その結果得られる大量の定性情報を分析するためのしくみや手法が不可欠」(坂本氏)になったのだ。

口語体に強い、強力な日本語テキスト解析でユーザーの声を分類

まず、リクルートグループの各事業会社が商品やサービスごとにマーケティング調査を実施していたのでは、コストも時間もかかりすぎる。その問題を解消するために、2014年6月にリリースされた「ココロバ」だ。

リクルートグループの各事業が、MROCやアンケートの機能を共通に使え、かつ、事業ごとに自由にカスタマイズできるようになっている。いわばコミュニティ機能を支える汎用基盤。マーケティング業界では、アンケートなどに答えてもらう母集団をリサーチパネルと呼ぶが、「ココロバ」はリクルートグループ独自のリサーチパネルということもできる。

「ココロバ」の登場によって、従来45日ほどかかっていたコミュニティ立ち上げが、わずか数時間に短縮されたという。

「ココロバ」の機能で、技術的に注目すべきなのは、テキスト自動解析によるビッグデータ解析だ。これを実装したのが、リクルートテクノロジーズ・ITソリューション統括部ビッグデータ部のシニアアーキテクト・石川信行氏だ。

▲株式会社リクルートテクノロジーズ ITソリューション統括部 ビッグデータ部 兼 アドバンスドテクノロジーラボ シニアアーキテクト 石川信行氏

「ココロバは一種のソーシャルネットワークなので、ここに集まるテキストは、口語体がほとんど。中には絵文字や記号も含まれます。こうした日本語口語の構文解析や文脈解析は難易度が高く、製品としてはほぼないのが現状です。そのため、独自にアルゴリズムから設計しました」

石川氏が「ココロバ」に導入した自動テキスト解析基盤は、まずアンケート、リサーチ、問合わせなどで使われる日本語テキストに対して、細かいチューニングをほどこした係り受け処理、形態素解析、感情分析、反転分析などの解析ロジックを適用する。

メッセージに付いているエモティコン(絵文字)も解析しやすい感情情報に置き換える。これらを「質問」「苦情」「感想」などのニーズ別に分類してHadoop基盤に蓄積する。

定性情報のままでは可視化しにくいので、これをスコア化して定量情報へと「見える」化したことも特筆される。「ココロバ」には必ずしもIT専門ではない事業担当者も簡単に使える「ダッシュボード」機能が備わっている。

「ダッシュボードでは、ユーザーコメントがスコアリング化されているので、ユーザーの商品やサービスに対する改善要望の優先度がすぐわかります。また集計結果をドリルダウンしていけば、実際のコメントの内容にたどり着くこともできます。数百万のテキストデータが瞬時に、かつ自動でスコア化されることで、ユーザーニーズの把握からサービス開発、改善までのプロセスが一気にスピードアップしました」

石川氏は、「これだけの機能を持つテキスト解析基盤は、おそらく他社にはない。リクルートが世界で初めてと言ってもよい」と自負する。

むろん、こうしたビッグデータ解析基盤は膨大なデータを日々解析しながら、たえずチューニングを重ねることで、精度を高めていく。今後はコミュニティ内のメッセージ分析だけでなく、例えばカスタマーサポートにメールや電話で届いた要望を、テキストデータに落とし、それを解析するというような使い方も検討されている。

リクルートの各サービスで使われる画像認識技術

石川氏は、リクルートテクノロジーズの研究開発機関のアドバンスドテクノロジーラボのシニアアーキテクトも兼務する。そちらでは、テキストだけでなく画像分析も研究テーマだ。

「GoogleやMicrosoft、Facebook など世界の先進企業がやっているのとほぼ同じ機能は開発できています。一般物体認識と呼ばれるもので、例えば動物の写真を学習パターンに照らし合わせ、ネコ、イヌ、鳥…などに分類できます。動画分析については、基本的には動画も静止画のつらなりにすぎないので、技術的には可能です」と、言い切る。

画像分析技術は、全国の美容院・美容室・ヘアサロン検索・予約サイト、「ホットペッパー・ビューティー」におけるネイルのデザイン分類や、各サービスサイトにおける画像校閲──入稿された写真を分類して、規約に反するものは排除する──などに活用されているという。今後は、「ココロバ」でも使われる予定だ。

「ココロバ」のコミュニティ機能は、店舗用無料POSレジアプリ「Airレジ」でも使われている。Airレジを利用している飲食・小売のオーナー、店長らがレジの使い方やサービスの改善について議論する場だ。

「自由に議論してもらっているので、Airレジの機能からは外れた問題──例えば店員教育やメニュー開発についてもユーザー間で話題になることが多いんです。そういう課題の解決についても私たちが何かサポートできないかと思っていて、今後は飲食店コンサルタントをコミュニティに巻き込んで、ユーザーからの質問などに答えてもらう仕組みを作りたいなと考えています」と、坂本氏は語る。

テキストマイニングや画像解析など最先端のテクノロジーを駆使しながらも、ユーザーから決して乖離せず、その生声に密着した事業展開を進める。リクルートグループならではの姿勢がここにも窺われるのである。

(執筆:広重隆樹 撮影:平山諭)
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