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実数論、微分方程式、代数、離散数学、トポロジー「プログラマのための数学勉強会」第4回レポート

2015.08.28 Category:勉強会・イベント Tag: , ,

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7月24日、第4回「プログラマのための数学勉強会」がヤフーのセミナールームで開催された。
今回のテーマも、集合論・実数論、微分方程式・ラプラス変換、代数学、離散数学・計算科学、代数トポロジーと、数学好き垂涎のマニアックさ。
どんなセッションが行われたのか、ダイジェストで紹介しよう。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

今回のテーマと目次

「プログラマのための数学勉強会」第4回からは、各セッションの難易度を星3つで示すようになった。

何もないところから数を作る(集合論、実数論)

最初に登壇したのは同勉強会を主催している佐野岳人さん。セッションタイトルは「何もないところから数を作る」。

同セッションは星1つ(最も難易度の低い)。佐野さんは「これを難易度1にしたのは少し間違いだったかも」という前置きをしつつ、まずは「数とは何かについて」という歴史を振り返るところから始めた。

数を語るのに欠かせないのが古代ギリシャのピタゴラス。ピタゴラスの有名な言葉は「万物の根源は数である」。ここで言う数とは自然数とその比のこと。

ピタゴラスは「無理数はない」と思っていた。弟子が2等辺三角形の底辺が√2になることを伝えると、死刑と宣告したという。

そして次に数を知る上で欠かせないのが、ユークリッド。「原論」の著者で幾何学の父と呼ばれている人物だ。しかしユークリッドも、数はやはり自然数だと言っていた。古代ギリシャの滅亡とともにギリシャ数学は衰退し、イスラム世界に引き継がれ、代数学が発展。その代数方程式の解として登場したのが無理数である。

13世紀になり、数学はヨーロッパに再輸入されて次第に復活していく。そして、爆発的な革命が17世紀に起きた。ニュートンやライプニッツによって微積分学が発明されるたことだ。

これにより位置や速度などの連続的に変化する量を解析する手段が確立された。「連続のモノを扱えるようになったのは大きな変化だ」と佐野さんは語る。

18世紀もさらに物理学への応用として微積分学が発展したが、無限小や極限などが曖昧なままで、例えばフーリエ解析などの無限の関数列の和みたいなことをやると変な結果がいろいろ出てきたという。

下図はその一例だ。

(-1)の無限乗を足していったものを計算すると、0になるが、最初に1だけ残すと1という答えになる。つまり0=1になるというおかしな例だ。

19世紀、「解析学に幾何学で要求するような完全な厳密さを与えよう」ということで、コーシー(フランスの数学者)とワイエルシュトラウス(ドイツの数学者。体育教師もやっていた)によって無限小や極限が定式化された。これが「理系大学生殺しのε-δ論法だ」と佐野さんは言う。

コーシーの言う幾何学で要求するような完全な厳密さとは、経験や直観に寄らず、定義・公理から出発し、論理的な手続きのみによって理論を展開していく方法である。

つまり数列や関数の極限を扱うには、「実数とは何か」を定式化しなければならないということ。

実数とは下記を満たすモノである(実数の公理)。

  1. 四則演算ができる
  2. 実数同士大小が比較できる
  3. 実数全体はつながっている。

これによって実数が明確に定義され、厳密な理論を作り上げていくことができるが、一方的に「これが実数です」と言われるのは「これは仕様です」と言われるようなモヤモヤ感が残る。

そこで「空集合」から始めて、自然数、整数、有理数、そして実数を作ることができるということで、本論の「何もないところから数を作る」が始まった。

何もないところから数を作る

自然数を作るには、まず自然数とは何かを定める必要があるという。そこで佐野さんは自然数の公理を披露し、「これを満たす集合Nを自然数系と呼ぶ」と言う。

「Nでは数学的帰納法が成立する」が公理に入っているのは不思議な気がするかもしれないが、上の4つだけだと例えば「0以上の実数全体」でもその条件を満たしてしまう。

フォン・ノイマンによる自然数系の構成にしたがって順に作っていくが、わかりにくい。そこで空集合をネコに置き換えて考える方法を紹介。これは「はじまりは何でもよいので、空集合にしとけば何も用意しなくても済むことを説明しただけ」なのだそう。

自然数系に順序と演算を入れていき、和a+b、積a×bの定義などを当てはめていくと、自然数はアルゴリズムで構成できることがわかる。

ここで「空配列」を空集合とみてプログラムを実装するデモを実施。「サンプルコードを挙げているので、ぜひ試してみて欲しい」と佐野さん。

こうして何もないところから自然数が作れることを証明した。作れた後は0が空集合だとかいうことは忘れて、普通の自然数として扱っていいとのこと。

次に整数Zを作る工程へ。Nを二つ0のところで貼り合わせて、正負の場合に合わせて演算を定義すればよい。かっこいいやり方も紹介された。

この図の場合は直線上に並ぶ点たちをまとめて一つの整数とする。こうすることで演算も簡単に定まるのだ。

第3に有理数(Q)を作る工程へ。図の様に縦方向に分母、横方向に分子を取る。分数は2つの数字で表される。つまり「(0,0)と(p,q)を結び直線上の点をまとめたモノ」がp/qというわけだ。Qは+、-、×、÷で閉じた「体」になる。「限りなく密に分布しているが、まだ無理数の穴が開いている」と佐野さん。

最後はいよいよ実数R作りへ。

Qに空いている無理数(eやπなど)の穴を埋めるため、Qの中で目標の無理数に近づいていく数列を考えるという。指数関数のテイラー展開をし、有理数の無限部分和を取っていく。

この数列はQの中でeに近づいていくので、この数列をeということにするという。しかしそれではずるい。そこですべての無理数は有理数列の極限として表せるのかというと、それは分からないという。「無理数の全体はまだ分かっていない」からだ。そこで無理数を学的な超越的な方法で作る。

一つはeに近づく数列をまとめて、それを1個の実数という方法。それがカントールの実数論である。

もう一つはデーデキント・カットという、有理数の切断一つ一つを実数ということにする方法。

これらの構成法によって作られた数は連続性を満たすことが証明できるが、「非常に難しい」と佐野さんは言う。それは実数の公理「実数全体はつながっている」という当たり前だと思っていたこの性質が、特別な性質だからだ。

このように19世紀以降、数学はどんどん公理化されていった。それは「数学の独立と自由のためではないか」と佐野さんは解釈しているという。前提条件を徹底的に明確にする代わりに、何を前提とするかを選べる自由を得たというわけだ。

例えば、6+7=1や1/0=∞は間違いと教えられる。

しかし以前の勉強会で辻さんが紹介した「時計の世界の整数論」だと、6時から7時間経過すると1時となり、6+7=1は正しくなる。だからこういうのがあってもいい。

「当たり前のように受け入れていたことを、どういう風に当たり前に受け入れていたのかを明確にすることによって、そうではない解が採用できるようになる。それが19世以降の面白いところ」と語り、セッションを締めた。

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何もないところから数を作る(スライド講演動画

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今日から始める微分方程式(微分方程式、ラプラス変換)

次に登壇したのは、家治亮さん。セッションタイトルは「今日から始める微分方程式」。今回説明するのは制御工学で使う微分方程式である。「慣れてもらえれば難しいモノではない」と語り、セッションをスタートさせた。

まずは微分方程式について。微分方程式とは、未知関数f(x)とその導関数fn(x)を含む方程式である。

常微分方程式はf(x)が一変数関数という簡単な方程式のこと。ニュートンの運動方程式は常微分方程式の代表例だ。変数が2つ以上ある場合は、偏微分方程式となり、難易度が非常に上がる。

ミレニアム検証問題で出題されたナビエ-ストークス方程式はその代表例で、これは未だに解けていないという。

また微分方程式は線形、非線形でも分類できる。線形とは線形結合としてかけるもののことだ。

右記にq(x)という関数があるが、q(X)が常に0であれば斉次(せいじ)という。0でなければ非斉次という。一方、非線形は線形でないものである。この例としてはバンデルポル振動子が挙げられる。

微分方程式の例

最初に挙げたのは2階線形の例。y”=-yとなるような方程式があったとする。

一般解では

y(x)=C1 cosx+C2 sinx

となるが、問題を解く人が欲しいのは特殊解。「何か条件を与えて、整数のC1やC2を設定して、その条件を満たす特殊解を求めることをやっていきたい」とkajiさん。

もう一つの例として挙げたのがy’=ayという1階線形の例。

これの一般解はy(x)=C1eaxとなりこの例は置換積分法で計算できる。特殊解はy(x)=eaxとなる。微分したら係数だけが出てきて関数の形が変わらないという指数関数となる。

微分方程式の線形(定数係数)の場合の解法についても説明された。

一般解を求める手順

一般解は以下となる。

線形代数の言葉を使うと、eαxの基底関数がありその線形結合で一般解が出てくる。また代数方程式の解は重解がないものとする。

そのほか、2階線形の例など、さまざまな微分方程式の種類と解法を紹介した。ここまでの説明で「課題が2つある」とkajiさんは言う。それが以下だ。

  • 非斉次:特殊解を求めるには技術が要る
  • そもそも現実的に必要なのは一般解ではなく、条件を満たす特殊解である

ラプラス変換で微分方程式を解く

ラプラス変換を使えば、特殊開が簡単に求まるケースがあるという。その例題としてあげたのが次の図だ。

これはRC回路である。Vinという電源があって、そこにR(抵抗器)とC(コンデンサ)がつながれている。コンデンサの両端の電圧をVc(出力)とする。電気回路の入力はステップ関数を使う。

時刻tが0より大きい場合は、1、0以下だと0を出すという関数だ。時刻0でスイッチを入れて、その後ずっと1を取る。これを加えたときにこの出力がどう変化するか、微分方程式で表すことに。

ここで使うのがヘヴィサイドの演算子法だ。同演算法は線形微分方程式の解法に利用される。

fを微分することを、pをfに乗じる、という演算法を発明した。

この演算子を使うとRC回路は次のようになる。

解の式を見れば分かるが、代数方程式のようにVcをくくり出している。そしてprcをxに置き換える。等比級数に変換する。

しかし、問題点もある。演算子pの曖昧さである。代数のように扱っていいのか、終章即するのか。しかしこの解法はすごく便利だったため、後にラプラス変換と発展し、今日の工学部の微分方程式でよく使われているという。

関数f(t)のラプラス変換は次の式で表される。

無限大から無限大まで積分範囲があって、しかも純虚数なので、収束条件は厳しい。そして定義通りに計算することは少ないという。

計算に採点必要なモノは次の通りだ。

ラプラス変換による解法は次の通りになる。両辺をラプラス変換するが、時間で変化数r関数は電気回路や電気工学だとVを使う。

最後にkajiさんはラプラス変換による解法のよいところ、よくないところをまとめてセッションを終えた。

  • よいところ:二次方程式と台数計算で解が出せる。
  • よくないところ:微分積分がない分のしわ寄せがある。例えば部分分数分解がおそろしく面倒なところ、ラプラス逆変換が次のような識になるところだ。

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今日からはじめる微分方程式(スライド講演動画

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忙しい人のための楕円曲線入門(代数学)

3番目に登壇したのは小滝大輔(@srtk86)さん。誕生日は3月23日で、いずれも素数なので、気に入っているそう。セッションタイトルは「忙しい人のための楕円曲線入門」。

まずは、「忙しい人のため」の忙しいとは何か、その定義から始めたい」と数学勉強会ならではのこだわりを示したKotakiさん。これは無駄なところをどんどん省いていくコンセプトだという。またご本人も忙しいので、資料は手書きしているとのこと。

まずは射影平面について。代数的な定義と幾何的定義がある。

上段のユークリッド系の解と、下段は有名なフェルマーの方程式の解を同次化させた解はどのように対応するのか。対数的には次のようになる。

分母がcになっているのはxの分母がcになると、yの分母もcになり、足して1に成ると判明するからだ。

x/zがa/cになり、y/zがb/cになる。そう言う比率になる組み合わせに対応する。tは何でも良い。すべてが同じ1点に対応する。Zが0の時は、左の対応はない。

射影平面では比率が同じだと同じグループ属する。そういう同族関係で作ったものが射影平面だ。

つまり、射影平面は[a,b,c]の全体である。ただし[0,0,0]は省く。そしてa:b:cの比が同じモノは同一視する。

ここで少し幾何な話へ。

射影平面における直線とは、αX+βY+γZ=0を満たす[X,Y,Z]の組全体と考えられる。

この平面を幾何的に捉えると、図の様に平行線にも無限遠点という交点ができる。これはユークリッド平面との対応がないところの部分になる。

通常のユークリッド平面を、A2={(x,y):x,yは任意}としたとき、射影平面はユークリッド平面と直線の方向の集合A2∪{「方向」の集合}
と見ることができる。

無限遠点という交点は平行線の方角によって1点1点異なるとみるので、無限遠点の集合は方角の集合と同一視できる。

方向の数とは原点を通る直線の数と一致する。それは射影直線の組み合わせを一つ少なくしたモノと一致すると言う見方ができる。

代数的な定義と幾何的な定義を対応させると、次のようになる。

「これで2つの定義が融合した」とKotakiさんは言う。この上で3次曲線を考えていくといろんなことが分かるというのだ。

3次曲線を考える

3次曲線上の群法則の説明に入る前に、まずは群について解説が行われた。

集合Gが演算〇において群であるというのは、群の数のa,bが

  • 閉じている a〇b∈G
  • 結合法則が成り立つ (a〇b)〇c=a〇(b〇c)
  • 単位元 ∋e∈G; a〇e=e〇a=a
  • 逆元(かけたら単位元になるモノ) ∋a-1∈G; a-1〇a=a〇a-1=e

例えばとして挙げたのは次の例だ。

  • 整数(Z)、有理数(Q)、実数(R)、複素数(C)は演算+において群
  • 単位元は0
  • 逆元は5に対しては-5
  • 自然数に対して逆元はないので、群にならない
  • かけ算においては有理数から0を取ったモノ、0に何を欠けても整数は群にはならない

以下を満たす演算があると次のような群法則が成り立つと言う。

有理点とは座標の一つ一つが有理数である点の全体のこと。これを図にすると次の通りになる。

これが閉じている理由は、3次曲線と直線の交点を3つ出した場合、3次方程式が生まれる、そのうちの交点2つが有理点であれば、残りの一つも有理点となるからだ。

単位元と逆元の取り方は図の通り。

結合法則を示す前に、C,C1、C2を3次曲線とする。CがC1、C2の9つの交点のうち8つを通るときCは9つめの交点を通る。

これを踏まえて結合法則を示したのが次の図だ。

C1、C2という元々与えられている3次曲線の直線3つのかけ算で置き換えられる。直線3つの組み合わせをC1とする。破線のC2も直線3つで仮定する。

こうしていくと、これ以外の点、PQROを割り当てると、PとQとRの演算で置き換えられるので、確実にこういう曲線を通っていることが分かり、C1とC2の交点も必ず通るということがわかる。

黒の曲線がどういう性質を持っているかは、赤い線と青い線がどう対応しているかを見ていけばよい。

(P+Q)*R=P*(Q+R)

あとはOと結べば、「結合法則が成り立つ」とKotakiさんは説明する。

さらに今後、3次曲線を考えて行く際に考えやすくするため、ワイエルシュトラスの標準形も紹介。

任意の3次曲線C0があるときに次の形に変換できるのが、標準形である。

アイデアは射影平面のX,Y、Z軸を都合良く選択することでできる。

X,Y、Z軸の取り方。0=[1,0,0]の接線をZ軸にして、Z軸の3番目の交点から接線を引いたモノをX軸。Y軸は0を通っていれば何でもいい。

こういう形で変換をしていくと、もともとこの曲線が[1,0,0]と[0,1,0]を通っているという線形頂点があって、それで3次曲線の方程式が制約される。

制約を受けた結果、3次曲線の係数は10個あるが、変数が5個まで少なくなる。あとはなんとか頑張ることでy2=(xの3次式)になる、という。

変換の例は頑張っていくと、こういう形に変換できる。

有理数を外れる実数を使ったりする変換をしていないプロセスなので、C0(元々の曲線)の有理点は変換した後の有理点にCの有理点に対応する。「ここが重要だ」とKotakiさんは強調する。

つまり楕円曲線とは

標準化の思想とは、前回の勉強会で佐野さんが線形代数のところで説明したが、次のように考えやすいCに変換していくようなことである。

標準形がいかに考えやすいか。

Z=0との交点はX=0(3重根)が残る。X=0は元々Y軸と平行な直線なので、無限遠点は1つだけ(これをOとして固定する)である。無限遠点のOも有理点と見なせるという考え方をする。

これが一つだけの無限遠点が単位元として働いくことで、圧倒的に群の演算が考えやすくなる。

最後に有限位数の点についても解説。有限位数とは今の足し算の演算を有限回行ったら、無限遠点、単位元のOに到達するポイントを言う。

位数2の点。

逆元と元々の点が一緒なので、y座標が一緒でないとダメ。x軸と交わる直線の点となる。

これ以外にも割り出す方法として使えるのがナゲルルッツの定理である。

もう一つ有限位数の点を何かしら含む場合、その位数は1~10までか12というように上限が決まっている。これは1977年にバリー・メイザーによって証明された。

最後に「次回は因数分解アルゴリズムや暗号理論などプログラマのためのセッションを行いたい」と予告し、セッションは終了。

■講演動画
忙しい人のための楕円曲線入門(講演動画

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繰り上がり則と記数法を考える

4番目に登壇したのは、カヤックの岩淵勇樹さん。学生時代は記数法を研究していたという。セッションタイトルは「コンピュータにおける数表現」。

まずは繰り上がり則と記数法について。よく使われる記数法は、位取り記数法(N進法)である。人間は10進法でコンピュータは2進法を使っている。2進数と親和性の高い8進数や16進数もよく使われている。

2進法は次のように表せる。

2進数の足し算は次のようになる。

このように繰り上がり則だけで足し算ができる。

次はφ進法(黄金進法)について。φとは黄金比のことで以下で表される。

φを基数とすることで、桁の重みをφ^nとすることによって、自然数をすべて書くことができるというなぞの現象が起こる。

φ2乗とφ4乗を足すと、φという無理数は出てくるが、それ以外にまったく無理数が出てくることなく計算できる。

ただ、2進数とは別の制約があり、「1が連続しているところは左に1個ずらす(1の連続は禁止)と言う計算が必要になる」と岩淵さんは説明する。

φ進法の繰り上がり則は次の通り。右に二つずれて繰り下がりが起こる、という法則が成り立つ。

2は繰り上がり則だけで足し算が可能で、2進数と同じでどんな自然数を表すことができる。

フィボナッチ記数法とオリジナル記数法「物智進法」

次に解説はフィボナッチ数へ。フィボナッチ数はウサギのつがいの問題が基になっている。

フィボナッチ記数法のルールは「桁の値は0か1」「1は連続してはならない(=11が禁止語)」となる。

ここでゼッケンドルフの定理を紹介する岩淵さん。ゼッケンドルフの定理とは「自然数は連続するフィボナッチ数を含まないような形で、相違なる1つ以上のフィボナッチ数の和として一意に表現できる」ということ。

フィボナッチ記数法の繰り上がり則は次のようになる。

この繰り上がり則は上の桁ではφ進法と同じ繰り上がり方だが、「下の繰り上がり」または「下の繰り上がり・繰り下がり」は特殊になる。

さらに自然数より広い記数法についても紹介された。まずは-2進法について。-2のべき乗が桁の重みとなり、整数全体を表現できる記数法である。

次は-1+i進法。これはD. Knuth (TeXの生みの親)によって考案された、複素数を基数とすることで複素整数を記述可能にする記数法だ。

2進数を並べたモノを1+i進数に読み替える。複素数を0、1、1+i、2+i、2iなどは複素数、それを平面上に置いてみると、下記のようなツインドラゴンというフラクタル図形となる。

そして最後に岩淵さんが紹介した記数法が完全オリジナルの「物智数」である。位取り記数法の桁の部分を拡張することで、自然数よりかなり広い範囲の数も表現可能にした記数法だ。

この記数法により、2進法や黄金進法などの繰り上がり則とも違うもっと変わった繰り上がり則はないかと考えてみたという。今までの数は一直線上に1と0が並んでいた。その並びを一直線にならないものにできないか。そこで考案したのが、「物智進法」。物智法の繰り上がり則では図の様に左と上に繰り上がる。

「大きい数だとさらにおもしろい形になる」と岩淵さん。気になる方はぜひ、こちらのURLで確かめてみよう。

最後に岩淵さんは「平面上に並ぶので、複素数よりもっと広い、何かを表せるに違いない。それが物智数の謎めいたところ」と、力強く語った。

■講演資料&動画
コンピュータで全く使われない数表現(スライド講演動画)、岩淵さんの数表現の詳しい解説記事「物智数(Butchi number, 平面的2進数)

音楽とトポロジー

最後に登壇したのは、simizut22さん。セッションタイトルは「音楽とトポロジー」である。難易度3にたがわず、非常に理解が難しいセッションとなった。

ちなみにsimizut22さんは元トポロジークラスター、現在はc++エンジニアで数理計画に携わっている。まずは音楽の空間を定義することから始まった。

空間は「集合+距離空間」で表される。

  • R:実数全体のなす空間
  • Z:整数全体のなす空間
  • Sn:n次元球面
  • Tn=S1×(円周)…×S1
  • S1=R/Z(1次的球面)
  • Σn:symmetric goup
  • Cn:cyclic shifts⊂Σn
  • Zn:Z/nZ

音楽の構造としてまず考えるのはリズム。図はSafi_al-Din_al-Urmawという人がおそらく最初に提唱したという。

そして2000年にアンク(ペルー)という人が発表した論文に「アフリカン音楽にはこの説が適切だ」と書かれている。

リズムは同じ音を同じタイミングで鳴らすわけではない。連続して鳴らすことを考えると、鳴らすタイミングが必要になるので、同じ物に対してもリズムの距離を次のように定義する。

全てのサイクリック(巡回)群の中で最小を取る。

ピッチクラス(音の高低)を考えることもできる。それを表したのが次の図だ。この場合、1オクターブの差を無視することにすると、サイクリックなモデルとなる。

Logの方が良いと書かれているが、この理由についてはよく分からないのだそうだ.参加者からは「耳が感じる音の高低が対数。それを12等分にした方が良いからではないか」という意見が出された。

ピッチクラスの距離は次のように定義(Rahnにより)される。

次に和音の場合はどうすればよいか。「音の重ね合わせだから、愚直に定義してみると良いのでは」と、次のように定義。

しかし1周しても同じ音を出したいのに、これだと差は出てしまうということで、次のように改良。

生息する空間は次のようになる。

n次の対称積を一般化。サブグループは群の部分集合で、それ自身も群となる。

音楽の生息する空間は以下の通り。

実データだとn固定ならいいが、n混ざった場合はどうするのか。N=∞にすると大きすぎるのでサンプルデータから空間を再現しようということで、トポロジカルデータアナリシスをすることに。

ホモロジーを定義する

そのためにはまずはホモロジーについて。実は参加者の中にはホモロジーについて分からない人も多かった。しかしホモロジーについての解説のする時間はなく、解説は続けられた。まずは単体複体について考えることに。

これは単体複体だが、ホモロジーはチェーン複体を定義することで定義できる。そのためチェーン複体を定義する。

boundary operatorを次のように定義する。

ようやくホモロジーが定義できる。

ホモロジーはチェーン複体が一つあれば定義できたが、パーシステントホモロジーは単体複体の増加列により定まる。簡単に言うとパーシステントホモロジーは生成と消滅を検出し、それをデータ化したもの。「とにかく頑張るしかない」とsimizut22さん。

各単体がいつ生まれるかという情報をシャドウで表す。Ktはどんどん増加していくので、ある初めて表れる単体の時点をTで表しているという。

これで定義ができたが、filatationがいる。しかし心配はいらない。そのために距離を入れているからだ。

ちなみに単体複体の例としては、次のようなものがある。

  • Čech
  • Vietoris-Rips
  • alpha
  • wrap
  • witness

simizut22さんは、最後にホモロジーのための研究ソフトを紹介し、セッションは終了した。

■講演動画
音楽とトポロジー(スライド講演動画

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CodeIQ高校の数学教師 Lala*先生からの「ソートの範囲」問題

☆超ドS女数学教師Lala*先生から出題が出ています。
「プログラマならソートすべき範囲くらい分かって当然よね。数学は関係ありそうでなさそうだけど、とにかく今すぐここから挑戦してちょうだい!」
●締切は、9月8日(火)AM10:00まで

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