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堅牢なJavaAPIとRubyによるフロントエンド開発とScrumを導入!「ギャザリー」開発の舞台裏

2015.09.02 Category:インタビュー Tag: , , ,

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人手で情報やコンテンツを収集・整理し、それによって新たな価値や意味を付与して共有するキュレーションサイト。
昨今、膨大な数のサービスが登場しているが、リクルートライフスタイルの「ギャザリー」もその一つ。
堅牢なJavaAPIとRubyによるフロントエンド開発とScrumを導入したというサイト開発の舞台裏に迫った。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

グルメ、旅行、ファッションなどライフスタイルを伝える記事が1万本以上

「『ホットペッパー』や『じゃらん』などを通して、人々のリアルな生活を充実させるお手伝いをするというのがリクルートライフスタイルの事業ドメイン。
ギャザリー』はグルメ、美容、旅行などのライフスタイル領域に特化して、その分野に詳しいユーザーが記事を提供することで、人々が日々の生活でよりよい生活を選択するための手助けをするメディアです」
と、サービスの概要を紹介するのはギャザリーチームの林裕大氏だ。

株式会社リクルートライフスタイル 林 裕大氏
ネットビジネス本部 プロダクトデザインユニット プロダクト開発グループ ギャザリーチーム リーダー

現在、『ギャザリー』にはグルメ、旅行・おでかけ、ファッション、ライフスタイル、恋愛の6つのカテゴリーがあり、総数1万本以上の記事がストックされている。

例えば「初心者OK☆簡単なのにプロ級の仕上がり!マニキュアを塗る5つの法則」という、セルフネイルの楽しみを紹介した記事はすでに118万PVを突破した。

男が追いかける『女』5つのポイント 捨てられる女から卒業するテクニック」、「たった10分で豪華弁当!!噂の『おにぎらず』の作り方とレシピ集」など、簡単には読み捨てできないような、キャッチーな見出しが並ぶ。

記事の絞り込みのためには、記事カテゴリー以外に「モテる」「カワイく」「リッチに」など、読者の欲求に沿ったタグも用意されている。

執筆者は「キュレーター」と呼ばれるが、各分野の人気ブロガー、美容師、食べ歩きのプロなど多彩。現時点で記事を投稿しているキュレーターは400~500人ほどいる。

「もちろん、リクルートライフスタイルがキュレーションサイトを運営するのは初めて。僕らにメディア構築のノウハウがあったわけでもありません。企画書とExcelで作ったサンプルをもって、ブロガーさんなどに個別に企画を説明してまわりました」と、林氏はリリース前の苦労を語る。

「キュレーターが揃ったので、最初は自然に記事が増えてくるかなと思っていたんですが、実際はそうでもない。そこでキュレーターさんたちとはマメに連絡を取るようにしました。投稿時に使うCMS(コンテンツマネジメントシステム)で、使いにくいところないか、、そもそもなんで書いてくれないのかなど、課題になるところを聞いて回りましたね」(林氏)

メディアを育てるためには、書きっぱなし、作りっぱなしではなく、アフターフォローがきわめて重要であるというのが最初の教訓だ。

JavaAPIとRubyによるフロントエンド開発「ギャザリーモデル」

Web投稿で使うCMS(コンテンツマネジメントシステム)は、同チームの独自開発によるもの。

    ▲「ギャザリー」のCMSログイン画面。実際の掲載画面に近いイメージで投稿できる

サービス構築の初期にどんな技術やツールを選択するかは、後々の開発に大きく影響してくる。初期の技術選定について、スタート時期のチームリーダー・小川健太郎氏はこう振り返る。

「変えやすいように作る、というのが技術選定にあたっての基本的なコンセプト。主要な機能は全部API化して、それを内部的に呼び出し、それでWebサイトを構築するという考え方です。例えば、社内IDとの連携はすでにJavaのAPIが提供されていたのでそれを使い回しすることにしました」

株式会社リクルートライフスタイル 小川健太郎氏
ネットビジネス本部ディベロップメントデザインユニット アーキテクト2グループ グループマネージャー

「他にも基礎的な機能はAPI化しています。一方、フロントのほうはRubyで書いています。RubyはデプロイするにしてもJavaより簡単。気軽にどんどん改修を加えることができます。バックエンドはJava APIで堅牢性を重視、フロントはRubyで書いて保守性やエンハンスを容易に、というモデルですね」

Rubyエンジニアが大勢いれば、Rubyの選択は必然だが、実際のところは、ほとんど社内にはいなかったという。

「Javaの社内フレームワークによる構築方法が型化されていて、それが選択されることがほとんどです。『ギャザリー』のようなサイトではRubyで書いた方が絶対メンテしやすいしと思って、まずはRubyを書ける人を探す社内の旅に出ました(笑)」と小川氏。

レガシーのシステムにとらわれることなく、軽量なインフラでカジュアルにリリースしたい。そのための新しい技術の導入。新規サービスだからこそできたことだが、このスタイルは、その後、社内でも注目される。

「Rubyを知っている技術者であれば、事業内容のことは知らなくてもすんなりシステム開発に入れる。リクルートライフスタイルはもともとエンジニアリングの会社じゃないんですが、それでも今後のサービス拡大のためには、エンジニアの力が不可欠。エンジニアにとって楽しい仕事を作って、エンジニアの活躍の場を広げたい」という、林・小川両氏の思いをこめた技術選定であったのだ。

「これを『ギャザリーモデル』と呼ぶ人もいます。今年4月以降の新規サービス案件でも、『ギャザリーみたいにやろうよ』という声が他部署からもチラホラ聞こえるようになりました」(小川氏)

チームの物理的・心理的な距離を近づけるScrum導入

2015年3月入社後すぐにギャザリーチームに加わった高丸翔英氏は、その前は、デジタルコンテンツプラットフォームを運営するスタートアップで、エンジニアとして、記事配信プラットフォームの開発・運用、新しいコンセプトのCGMの立ち上げを担当していた。

「リクルートにはたしかにエンジニリングのイメージはなかったけれど、話を聞くとそうでもなさそう。大きな会社で新規事業をやりたい。エンジニア文化が弱いのなら、自分の力でそれを創り出したい」という思いがあった。

株式会社リクルートライフスタイル 高丸翔英氏
ネットビジネス本部 ディベロップメントデザインユニット アーキテクト2G 新規サービス基盤チーム

彼が最初に手がけたのは、開発にScrumを導入すること。

「最初の開発は小川さんが手がけた。それを1から100にスケールさせるには、全員が開発手法を意識し、チームとしてそれに取り組むことが欠かせません。特にギャザリーのチームは当社では珍しく、企画者、開発者、それに事業責任者までもが近くに机を並べている。物理的にも席が近いということは、Scrumを成功させるうえで理想的な条件だと思いました」

とはいえ、Scrum経験者は高丸氏のほかにはいなかった。

「やってみせるのが一番いいかなと思って、教科書通りにScrumを導入していったんですが、すぐに自分頼みになってしまって、メンバーが動いてくれない。そこで、スプリントごと振り返りの場で、どうしたらいいかをみんなのアタマのなかで共有できるようにしました。上からの介入ではなく、メンバーに任せるという方向への転換です。内部コミュニケーションを増やして、チームメンバーが自主性を発揮できるようになるまで、数ヶ月かかりましたね」と振り返る。

Scrumは開発手法の一つに過ぎない。それが成功するかどうかは、メンバー一人ひとりが何のためにScrumを導入するのか、その意義を「腑に落ちるように」理解しているか、どうかにかかっている。

リクルート入社後5年間は営業や営業リーダーとして仕事をしていた林氏は、「毎日の報告をもとに、次の課題を引き出す営業セクションのワークスタイルは、Scrumに近いと思った」という。

「Scrumのいいところは、課題や進捗状況が徹底的に可視化されるところ。その上で、席が近いから、こういう機能を開発したいというときに、企画と開発がすぐ話せるし、そこに事業責任者も巻き込んですぐに決済が取れる。Scrum導入後は、システムのアップデートの間隔も短くなり、ユーザーの要望にも柔軟に対応できるようになりました」と、その導入効果を認めている。

物理的にも近いところで仕事をするチームが、さらにScrumを意識してチームワークを高める意義を、小川氏は「心の距離が近くなる」と表現する。

さまざまな新企画や改善提案への心理的なハードルが、限りなくゼロに近づくのだ。

自分たちが決定権を持つ自社サービスの強みと楽しみ

現在のギャザリーは、リクルートライフスタイル社の各事業サイトへの読者の誘導という目的は持っているが、それ自体で収益を上げることはミッションではない。

「いかに記事をたくさん投稿してもらい、読者を増やすか、その2点に関心を専念できます。もちろん、広告効果などを数字的に把握することで、収益を仮想的に想定することはできますが、僕らはその分を全部、キュレーターさんに原稿報酬として還元していきたい。業界水準をたえず上回るような報酬モデルをこれからも追求していきます」と、林氏が今後の事業モデルを語る。

記事がサイトの上部に並ぶには、それなりの条件がある。たんなるPV数の順番ではなく、コンテンツの質が重要だ。「上位に掲載されれば、結果的にPVが増えるので、キュレーターの報酬も増えるるため、自ずから内容に工夫を凝らすことになりますね。そういう循環を生み出していきたい」

「サービスの拡大に応じて、自在にシステムがスケールするような仕組みが大切。そのためには、自動化できる部分はどんどん自動化していくことが重要」と、高丸氏は技術的な課題を挙げる。

記事に掲載する写真は現時点ではキュレーター自身が撮影したもの、個別に許諾を得たもの、商用フォトサービスのものなどに限定している。

だが、今後はリクルートライフスタイルが持つ豊富な画像リソースとの連動も考えている。そのためには、技術的な作り込みも必要になるだろう。

「どんな機能を実装していくにしても、それを自分たちで決められるというのが、自社サービス、自社開発のよいところだと思います。人に命令されたくないけど、自分で責任を持ちたい。そういうエンジニアにとっては面白い仕事ができるフィールドだと思いますよ」と、ソフトハウスで受託開発が長かった小川氏は、今の職場の魅力を語っている。

(執筆:広重隆樹 撮影:刑部友康)

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