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エンジニアとしていかに幸せに生き抜くか?まつもとゆきひろ氏が説く「エンジニア・サバイバル」

2016.09.12 Category:勉強会・イベント Tag: ,

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CodeIQ感謝祭の基調講演で、まつもとゆきひろさんが語った「エンジニア・サバイバル」。エンジニアとしていかに幸せに生き抜くか──その講演内容を再現レポートする。 by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

人が幸せになるための条件とは何だろう

人はどうなれば幸せなのか。例えば年収1千万円を超えると人は幸せなのかといえば、そうとはいえない。人が幸せになるにはいくつか条件が必要になるが、一人ひとり求めるものも違えばバックグラウンドも違う。

そこで今日はいくつかの話題を提供し、結論へと導いていきたいと、まつもとさんは語り始めた。ここからは講演を再現するかたちでお伝えしていく。

格差をなくすことは本当に良いことなのか?

幸せになるための方策を考える前に、まずは格差の問題について考えてみたい。日本は格差が拡大していると言われている。選挙演説でも「格差社会はいけない」などと語られていたりする。

では「格差が小さいことが本当に良いことなのか」と言われるとどうか。これには違和感がある。普通の収入を持っている人がお金持ちに対する感情は、大きく2通りに分かれるのではないか。

* ねたましい
* 自分もああなりたい

前者は恵まれた人や成功している人を見て、妬ましいというのは醜い感情だ。一方後者は、前向き勝つポジティブな感情である。だが実は前者のこの醜い感情を「格差解消」という言葉で、都合よく化粧しているだけではないかと思えるのだ。

例えばアメリカンドリームという言葉がある。アメリカンドリームは身分や出自に関係なく、庶民のポジションからでも成功することができるという成功の概念だ。

格差があっても、アメリカンドリームがあるから、人は頑張ろうと思える。そこにあるのは向上心である。つまり格差があるから向上心が生まれるということもあるのだ。確かに恵まれた人は成功しやすいとはいえ、現在の日本は自分が頑張ることで、成功できる社会になっている。

では成功するには何が必要か。第一にルールを理解することである。もしくはものすごく運に恵まれること。運の良い人はルールなど理解しなくても成功するからだ。だが運は制御不能なので、運で勝負するのはお勧めしない。

実は私は10年ぐらい前に、運に賭けてみたことがある。ネットの懸賞に片っ端から応募してみたのだ。その結果何が起こったか。まずはスパムメールが頻繁にくるようになった。

そしてある日、車で家に帰る途中でカーブを曲がるときにガードレールにぶつけてしまうという事故を起こした。その事故と引き換えなのか、その日自宅に戻ると懸賞で当たったパソコンが届いていた。だが、PC1台では幸せになったとは言いがたい。だから運に賭けることはお勧めしない。

能力と収入は比例しない!?

冒頭に年収が1000万円になったからといって、幸せだとは言えないと話したが、収入が多いことは幸せになる1つの要素であることは事実だ。そこで能力と収入の関係について考えていこう。

年収500万円の人、年収1000万円の人、年収5000万円の人、年収1億円の人がいたとする。年収500万円と年収1億円の人とは20倍の収入差がある。だからといって能力の差は20倍あるとはいえない。

つまり実力の差と収入の差は比例しないのである。そこで能力と収入の関係について、次のような仮説を立ててみた。

仮説1.年収の対数が能力に比例するのではないか

この仮説だと、能力が1.3倍違うと、20倍の年収差が起きるというわけだ。自分の能力を20倍伸ばすのは難しいが、1.3倍なら希望が持てる。

仮説2.年収と能力は無関係である

能力を高める努力は無駄と思わせるような身もふたもないような仮説だが、では能力ではないどんな要素が収入と比例するというのか。差が付く要素の一つが評価だ。これは成果とも言い換えられる。つまりその人の価値が収入に比例する。

しかもこの「価値」は能力だけでは決まらない。では評価を高めるために何をすれば良いのだろうか。

評価は次のようなものに左右される。

* 知識・経験
* コネクション(人脈)
* 信頼感
* 知名度

中でも最後の知名度は結構重要である。例えば今日、エンジニア・サバイバルというテーマで講演をしているが、私の専門はプログラマであり、プログラミング言語を作ることを専門としている。

幸か不幸か私が作ったプログラミング言語が多くの人に使われることとなり、今では日本を代表するプログラマと呼ばれるようになった。国内には私より優秀なプログラマは一杯いるにも関わらずである。

つまり実力はともかく、知名度があることで、いろんな仕事が舞い込んでくる。このように知名度は大きく評価に関わってくるというわけだ。

私たちはそれぞれ、達成したいゴールがあり、それに向かって日々、歩んでいる。ではそのゴールを達成するために、自分の持っているモノ(能力やスキル)を棚卸しして、人と差別化できるかどうかを考えていく。

自分の価値、評価を高める一歩はここから始まる。

サバイブして勝利をつかむために

現実の人生はゲームとは違う。例えばロールプレイングゲームであれば、ミッションが与えられ、それを達成するとファンファーレが鳴る。一方、現実はどうか。目的に向かうためのミッションは教えてくれないし、ファンファーレも鳴らない。

しかもゲームのように操作方法の説明も攻略本もない。だからといって、途方に暮れていると、エンジニアとして生き残れない。そこで重要になるのが、次の4ステップだ。

いまや大企業に入れば安泰という時代ではない。常に生き残りについて考えることが必要になっている。運だけでは生き残れない。ではエンジニアとしてサバイブしていけるのか。そこで必要になるのが次の4項目である。

ステップ1.目標の設定

何をやりたいのか、まずはゴールを決めること。

ステップ2.ルールの理解

この社会はどんなルールで動いているのかを理解する。

ステップ3.本当のルールを把握する

では本当のルールとは何か。その参考になるエピソードを紹介する。

今から30年前に東京工業大学の教授だった木村泉先生の問題解決による集中講義を受講したときのことを紹介する。木村先生は「プログラム書法」や「ソフトウェア作法」などの翻訳本を手がけられた方だ。

その3日間の講義の中に、「パンチカードタワー演習」という授業があった。いくつかの班に分かれ、パンチカードを使ってどれだけ高いタワーを作れるかという演習だ。条件があり、まずは道具として使えるのはパンチカードとホチキスのみ。

次に構造物は自重を支えていること。第三に構造物はすべてつながっていることである。つっかえ棒で支えたり、紐でつるしたりすることはNG。しかし、壁に立てかけるのはOK。そして、測定前にピン球3個をぶつけられるのである。

私たちのチームはカードを筒状にし、それを積み重ねるという方法を採用。そして3メートルのタワーを作り、優勝した。木村先生からは「よく頑張った」と言われたが、過去には15メートルという記録を出した強者がいたという。

3メートルでも精一杯だったのに、どうやって15メートルもの構造物を作ったのか。そのチームは階段を使ったという。1階から4階まで階段を利用してカードをつなげていったのだ。

先の3つの条件には、教室を出ては行けないというルールはなく、また既存の構造を利用してはいけないというルールもなかった。しかし私たちは3つのルールを提示されたときに、「こう解かなければならない」と思わされていたのである。

つまり私が3メートルのタワーしか構築できなかったのは、本当のルールを把握できていなかったからだ。

ステップ4.問題解決

これはエンジニア活動そのものといえる。ソフトウェア開発は、何かの問題を解決するために行うものである。ソフトウェア開発で培った問題解決能力は、他の分野でも生かせるはずだ。

そして問題解決の多くは、生産性を高めることでそれを可能にする。従って生産性を高めることやモチベーションを高めることを大事にしない会社にいるなら、今すぐ転職を考えることをお勧めする。

つまりエンジニアがサバイバルして生き残っていくには、私たちに与えられる様々なルールの本質を把握し、それに合致した中で目標に向かうべく効率的な問題解決手法を考えて行くことなのである。

エンジニアとして生き残っていくためには、エンジニアが最も得意とする問題解決能力を活かしていくことだ。

まずはどんなエンジニアになりたいのか、目標を定めること。そこから、エンジニアとして幸せな人生の一歩がきっと始まるはずだ。

第5回CodeIQ感謝祭「食欲とプログラミングの秋」開催!

次回のCodeIQ感謝祭は、9月24日に開催します。今回も司会の喜屋武ちあきさんをはじめ、澤円さん、増井雄一郎さんほか、豪華ゲストがたくさん!

なんとヨッピーさんと伊藤直也さんのパネルディスカッションも実現します。まだ未発表の登壇者やテーマも正式決定したらお伝えしていきますので、まずはこちらから参加表明をどうぞー!

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