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伊藤直也・増井雄一郎・まつもとゆきひろ・白石俊平が語る「必要とされるエンジニアになるには?」

2016.09.13 Category:勉強会・イベント Tag: , , , ,

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パネラーにまつもとゆきひろさん、トレタCTO増井雄一郎さん、TechFeed白石俊平さん、モデレータに一休CTOの伊藤直也さんを迎えたパネルディスカッションが開催されたCodeIQ感謝祭「夏の陣」。
その様子をレポートする。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

どこでも必要とされるエンジニアになるには?

パネルディスカッションのテーマは「技術のキャッチアップ、マネジメント、エンジニアの方向性etc.…『どこでも必要とされるエンジニア』になるには?」。

今回はITエンジニアに人気のRebuild流に、それぞれが気になるニュースや記事をもとに、意見を交わすというスタイルで展開された。

登壇していただいたのは、ITエンジニアなら誰もがその名を知っているこちらの4人の方である。

株式会社トレタ CTO 増井雄一郎さん


トレタでCTOを務める増井さんは、大学時代に起業、2003年にフリーランス隣Ajax、Ruby on Ralisなどを使ったアプリ開発や執筆活動などでも活躍。08年に渡米し、中島聡氏とアプリ開発会社を立ち上げたという経験を持つ。

株式会社オープンウェブ・テクノロジー CEO 白石俊平さん


オープンウェブ・テクノロジーCEOの白石さんは、かつてはJavaプログラマ。HTML5開発者コミュニティ「html5j」ファウンダーであり、現在はテクノロジー情報キュレーションサービス「TechFeed」に従事。ちなみにTechFeedのアプリはAngular2で開発したとのこと。

「Ruby」の開発者 まつもとゆきひろさん


基調講演に登壇したオープンソースソフトウェア「Ruby」の開発者であり、Rubyアソシエーション理事長まつもとゆきひろさんにも引き続き、ご参加いただいた。

株式会社一休 CTO 伊藤直也さん


そしてモデレータを、ニフティ、はてな、グリーを経てフリーランスとして活動した後、2016年4月より一休の執行役員CTO システム本部長として就任した伊藤直也さんが務めた。

最新技術はどこまで追う?キャッチアップの必要性とは

最初の話題は「技術のキャッチアップ」について。「そもそも最新技術を追いかける必要があるのか?」という伊藤直也さんの問いに対しては、次のようなディスカッションが行われた。

増井:私自身はほとんどニュースサイトも見ない。たまにはてなブックマークを見るぐらいで、最新技術を追いかけるようなことはほとんどしていないですね。

白石:私もニュースサイトは追わないですね。毎日、自分たちが発進している情報キュレーションサービスで技術情報のシャワーを浴びているので、そこで興味のレベルを保っている程度かな。

まつもと:私は技術を作る人なので、少しみなさんとは違うかも知れませんが、世の中でどんなニーズがあるかはチェックしています。つまりRuby側で解決できるものはないかという観点で見ている。例えばReactであればそれを使って何かを作ることはありませんが、それがどんな目的で使うのか、仕様はチェックしますね。

直也:みなさん、積極的には追っていないと。例えば面接に来た人が新しい技術に明るいかどうかは、採用のポイントになりますか?

増井:新しい技術を追いかけているかではなく、その技術について理解できるように説明できるかを見ますね。

直也:ぼくも面接に来た人には、自分がやってきた仕事や、その技術をなぜいいと思ったのか。またC#が好きというのであれば、その理由は何なのか、質問します。回答の中で、言語の特質とか把握して説明してくれれば「おっ」と思いますね。

白石:今の技術でどんなことがどこまでできるのかを、キャッチアップしておく必要はあると思います。

直也:言語はその一つのジャンルですね。最近だと例えばGoやScala、Elixirなど並行処理がうまく書ける言語など、パラダイムが一世代先の言語が出てきてますね。その辺をキャッチアップできてると、へえ、とは思いますね。

増井:私も言語は追っています。

まつもと:最新技術については必要に応じて勉強できていればよいと思います。

勉強会参加はエンジニアのスキルアップにつながるのか?

直也:技術のキャッチアップに関連して、勉強会問題がある。勉強会参加の是非についてそれぞれの考えを聞かせてほしい。というのも、あるスーパーできる若手エンジニアが勉強会について、「勉強会に出る暇があれば勉強しろと。勉強会は勉強になっていない可能性がある」という話をしていたんです。

白石:私は勉強会を主催しまくっていた時期がありました。その時も、勉強会に行くのはムダじゃないかという議論がありました。勉強会やイベントは楽しいから参加するんだという人が多いイメージがあります。

増井:登壇することはあっても、勉強会を聴きに行くことはないですね。白石さんが言うように参加するのは楽しいこと。たまに息抜きがてらに行くのはいいのでは。

直也:勉強会は自分のレベル感が相対的に把握できる機会になるのかなとは思います。例えばRubyKaigiやYAPCなどの技術系のカンファレンスとかに行くと、周りの人が前提知識だと思っていることがわからなかったり。自分が世の中の水準のどのぐらいの位置にマッピングできるのかが体感できる機会になると思います。たまに大きなカンファレンスに参加して、わからない話を聞いたとき、キャッチアップできていないと思ったときにネガティブになったりもするけど(笑)。

白石:ネガティブにはならないけど、興味の持たなかったものに持つようになったりはしますね。インターネットだと自分の関心事しか入ってこない。自分の関心に火を付けに行くという意識で参加します。

まつもと:勉強会は発表してなんぼかなと思う。ただ単に聴きに行くことはないですね。まあ、「発表したいんです」と申し込んで採用されるかどうかはわかりませんが…。

白石:以前、コミュニティマネジャーを務めていた勉強会で、大学生をアサインしLTで話してもらったんです。そのことを就職活動の面接で話したら、すごく興味をもたれ、採用につながったことがあったそうです。就活に役立った話を聞いて幸せな気持ちになりましたね。

マネジメント経験は必要?

白石:最近、技術顧問になりたいと言う人が増えているらしいんですよね。

増井:私が思う技術顧問のイメージは、一発屋歌手が地方でディナーショーをしている。そんな感じかな。

直也:技術顧問ってそんなに楽な仕事ではないですけど(笑)。ただ、エンジニアリングではない方向性に行きたい人もいるのも確かですよね。例えばエンジニアとして生き残っていくためにはマネジメント経験が必要だというようなこともよく世間では言われていますが、皆さんはどう思いますか?

ここで白石氏が会場の参加者に質問した。「エンジニアではないことをやってみたい」には、約2割の人が挙手。

直也:皆さん、マネジメント経験はありますか。

増井:マネジメント経験はないですね。人のマネジメントができないんです。だからやらない。社長からもメンバーからも期待されていないですし(笑)。

直也:白石さんはマネジメントに近い立場ですよね。

白石:プロダクトマネジャーを担っている意識はあります。ただ、人を動かす、説得することは苦手ですね。元々、人を動かすようなタイプではなかったので。最近人を動かす術がわかってきたので、多少は社会の役に立てる人間になったと思っています(笑)。

まつもと:マネジメント経験がないからといって、キャリアに不安を覚えたことはないですね。例えば目立って壇上に立つのはアノマリー(例外、異常)な人。目指すべきポジションはそういうところだと思う。今日のようなイベントに参加する人は、周りの人と同じことをやるのではなくてアノマリーを目指した方が良いと思います。

直也:私も他の人と同じことができなかったですからね。人の言うことを素直に聞けない、空気が読めない。そんな自分が生き残る道を探った結果が現在の私です。

白石:やりたくないことは絶対やりたくないですからね。だからそういうことができる方を尊敬します。

まつもと:僕もそれで会社を辞めましたから(笑)。

増井:技術のバックグラウンドを持った人が活かせるのは、プロダクトマネジャーだけではないと思います。

まつもと:技術顧問もあるし、政治家もある(笑)。余談ですが、GitHubで法案を管理すべきだと思っているんですよね。だから政治家もあると!

直也:では、エンジニアがマネジャーになるのは幸せでないことでもない、という結論でよいですか。

まつもと:やりたくない人はやらない方がいい。やってみたら面白かったという人はその経験を積めばよい。

直也:マネジメント未経験のときに、マネジメントは面白くないという先入観を抱いてしうのはもったいないかもしれないですね。

増井:確かにマネジメント職に就くと、コードが書けなくなる、会議にしか出させてもらえないというイメージがありますからね。

直也:コードを書けないというけど、誰からも書くなとは言われませんよね。マネージャーですからね。そうするかどうかは自分自身の選択だと思います。

マネジメント経験がエンジニアとしてプラスになることもあります。かつて私のチームに、納得感のあるアウトプットを出すエンジニアがいました。聞くと、オフショア開発のマネジメント経験があったんです。

彼はその経験から、いつも大局的に物をみることができるようになったんですね。マネージャーが彼に何を期待しているかもよくわかっていた。彼の場合、マネジメント経験が仕事の幅を拡げ、市場価値を高めることにつながっていました。必ずしもマネジメントを経験することがエンジニアとしてのキャリアにマイナスになるわけではないという例です。

生産性の高さを意識することの大事さ

増井:勤勉さだけでは改善できないのが、労働生産性だと思います。欧米に比べてエンジニアの給与が低いのも生産性が上がらないからという説もあります。どうやったら労働生産性は上がるのかというのは個人的にも興味がありずっと考えています。

まつもと:日本の企業は生産性を高めることを気にしていないと言うといいすぎかもしれませんが、そんな感じ。勤勉は仕事をしている満足感を優先しているような気がします。失敗は評価の低下につながるので、リスクを取らないことをする方が高く評価される。裁量性は低く、会議は多い。

しかもマイクロマネジメント。日本は生産性を高めようとしていないと思います。海外の人は長い時間働いていることはかっこ悪いという意識があると思います。

直也:まつもとさんが解説者として関わっている「SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル」という本には、意外にも「ハードワークしろ。一生懸命働け」と書かれていて、ワークライフバランスを追究しろ、ということは書かれていませんでした。

まつもと:これは人生の全体として働く量を最小化するには、スパートする時期があるということです。

直也:生産性を追求していない人は、ダラダラとSlackでチャットやっていたりして、そういうのは本当にムダな時間だとも書いてました。手厳しいですね (笑)。

まつもと:リアルタイム系のツールは私も仕事中はオフにしています。

直也:そういう風にストイックにやって生産性を高めてハードワークすると周囲から頭一歩抜け出ることができる。あの本が言いたいのは、一生において、そういう時期を設けることも大事だってことでしょうね。

まつもと:若手のうちにガリガリ働く。スタートアップの企業では、当たり前に行われていることです。

直也:「ハードワーク=いけないこと」というのは違うという価値観も一方ではあるってことですね。

白石:Apple社もハードワークで有名ですね。

まつもと:ただし、遊んでいないとダメなんです。そういう時間がないと、新しいことができないんです。だから矛盾することを言うようですが、無駄な時間は必要です。周りの人から見て、遊んでいるなと思われる方がちょうどいいのかもしれません。

白石:私も勤勉と生産性はリンクしないと思っています。

直也:エンジニアには生産性の他に創造性も問われると思います。生産性と創造性は両立しないという研究結果もあります。そういえばパッケージのゲームを作っている人は、ローンチしたあと長期の休みを取る方も多いらしいです。その間に次のゲームのアイデアが生まれてくると言っていました。

増井:生産性を上げないと余分な時間が作れませんからね。まずは生産性を上げることに取り組むことが大事かと。生産性の高めることが、どこでも必要とされるエンジニアになる一歩になると思います。

白石:生産性を高めるためには優先順位をつけると思うのですが、たまに優先順位を解き放つことも大事だと思うんです。その間は生産性を忘れて、好きなことを優先することができますから。

まつもと:個人ベースで生産性を上げてブラブラする時間を作るのはすごく大事なことです。ただ、組織で生産性を追究するのは危険なので、その辺は要注意だと思います。

最後に「どこでも必要とされるエンジニア」になる方法の一つに提案したいのは、名を売ること。これも大事なことです。勉強会のところでも言いましたが、登壇者になることもその一つです。

直也:収入の多くの部分は、能力ではなくて、市場原理で決まるのが現実です。能力だけではお金は支払えません。好きな技術だけじゃなくて、会社や世の中の需要に合わせた技術選択をする、セルフマーケティングをする。

収入を上げるには自分の市場価値を高めることにつながることをやらないといけない側面もあると思います。そういう現実を見据えるか、あくまで技術的な理想を追うかはみなさん次第だと思います。

伊藤直也氏は参加者にこう呼びかけ、パネルディスカッションを締めくくった。次回のCodeIQ感謝祭でも、注目のパネルセッションが開催されるので、ぜひ興味のある方は参加していただきたい。

第5回CodeIQ感謝祭「食欲とプログラミングの秋」開催!

次回のCodeIQ感謝祭は、9月24日に開催します。今回も司会の喜屋武ちあきさんをはじめ、澤円さん、増井雄一郎さんほか、豪華ゲストがたくさん!

なんとヨッピーさんと伊藤直也さんのパネルディスカッションも実現します。まだ未発表の登壇者やテーマも正式決定したらお伝えしていきますので、まずはこちらから参加表明をどうぞー!

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