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にゃんてっく☆やせないアイツとESP8266―おデブなアイツのダイエットのはじまり

2016.10.20 Category:【連載】にゃんてっく☆やせないアイツ Tag: ,

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何より猫を愛してやまない貴方に贈る、猫と、猫好きのエンジニアのためのIoT実践レポート。
1stシーズンでは、現代の家猫につきまとう”あの問題”を解消するべく、 猫を愛するエンジニア夫婦が奮闘します!
by 大内 孝子

ジンシャー、「デブ猫」宣告を受ける

フカフカしてかわいいけれど……この子は流石におデブちゃんね。ウフフ

獣医の先生からそう告げられたのは、猫を飼い始めて1年目の健康診断でした。

はじめまして、はとね(@hatone)ときょろ(@kyoro353)というエンジニア夫婦です。本稿の書き手は、概ね、私(はとね)がつとめますが、きょろさんと二人のプロジェクトです。

▲左がはとね(@hatone)、右がきょろ(@kyoro353)です

現在、私たちはアメリカ・カリフォルニア州のサンフランシスコで、2匹の姉妹猫「バジル」「ジンジャー」と一緒に暮らしています。

1年ほど前に、シェルターから里親として2匹をもらい受けました。バジルは好奇心旺盛で人懐っこくアクティブな性格。一方のジンジャーは温かいところを見つけては、いつもお昼寝をしているマイペースな性格です。

バジルよりもジンジャーのほうがひとまわり大きく、「生まれつき骨格が大きい子なんだろうね~」なんて悠長に話していたら、まさか単なるデブ猫だったとは……。

バジルとジンジャー。2匹とも丸くなっているのでわかりにくいが、右側がジンジャー

獣医の先生曰く、

このまま体重が増えていくと身体に悪いので、ダイエットさせましょう!
来月から体重測るために毎月病院へ連れてきてね。

こうして、私たちとジンジャーのダイエットがはじまりました。

ほらほら~猫じゃらしですよー
ほらほら! 動いて、動いて!


( ˘ω˘)スヤァ

猫じゃらしには目もくれず、何よりもお昼寝を優先するジンジャー。

猫タワー、猫じゃらし、個性的な爪とぎなどなど、さまざまな猫アイテムを買ってみたものの、釣れるのはいつもバジルばかり。おまけにジンジャーはバジルのご飯の残りもペロリと平らげ、どんどん大きくなっていきます。

迫りくる病院での体重計測を前に、私たち(と猫)は一体どうしたらいいのでしょうか……!?

野生にデブ猫はいない!?猫の不思議

そうだ、どーじん先生……!


どーじん先生

どーじん先生は、物理学専攻で神経生理学を研究しながら執筆活動をしている変人研究者。とある縁から知り合い、以前猫を二匹飼っていたということもあって、仲良くなりました。

生物や物理の疑問をぶつけると気軽に答えてくれる心強い存在です。今回もチャットで呼び出し、相談してみました。

うちの猫がデブ判定され、ダイエットを命じられてしまいました……。
どうしてこんなことに?

どーじん先生
「猫は完全な肉食で、狩りで生きてきた動物なんです。栄養バランスの完璧なキャットフードができたのは最近のことです。

昔は人から少しは残飯をもらっても、なんだかんだで獲物をとってたわけですが、キャットフードで栄養が足りると狩りをする必要がなくなるし、その真似事をする意欲も失せてしまったんでしょう。そのうえ部屋飼いということになると、そもそも運動するためのスペースもない。

野生にいると、いつエサにありつけなくなるかわからない状態だし、寒さで脂肪を燃焼するから、エサを食えるときは可能な限り食って、脂肪を蓄えておこうとするのが進化上フツーじゃないですか。飼い主に甘えるだけでいくらでもエサにありつけるなら、そりゃ食べちゃいますよね。個別の原因はわからないけど、一般的に太って当然だよなと思います。

実際、日本ヒルズ・コルゲート社(ペットフードのメーカー)のウェブサイトを見ると、動物病院に来る猫の約45%以上が肥満または太り過ぎらしいですよ」

なるほど……。人間との暮らしを通して太ることになったので、人間がケアしていかないといけないんですね。でも、ジンジャーはまったくオモチャで遊んでくれないんです。どうやってダイエットさせればいいのでしょうか?

どーじん先生
「獣医さんにアドバイスを聞いたり、『猫 ダイエット』とかでググろう!……と言いたいところだけど、あえて獣医じゃない僕が何か考えるとすると、そうだなぁ……人間の場合、最近は個人でも、バイタルやフィットネス、体組織のデータが取得できるようになってきてるんですよね。

家庭に置くことのできる製品やスマホなどを用いて定期的に計測して、患者同士で共有したりすることもあるようです。DIYやオープンサイエンス的な流れですね。

そんな感じで、ライフログとかライフハックの猫版みたいなものができたら、ダイエットに役立ちそうな気がしますよ」

主な動物の減量方法としては、人間と同様に食事の量を減らし、運動量を増やすことが大事です。そして、何よりも体重の増減を定期的に把握すること。

とりあえず、猫の体重を測ろうと、猫を抱きかかえて体重計に乗ってみるんですけど、すぐ逃げられてしまうんです。腕の中からするっと、とろけるみたいに。猫って何であんなに液体みたいな動きをするんでしょうね…。

どーじん先生
「猫だけに『猫背』ですからね。猫の背骨は人に比べて数が多いし細いし、靭帯や椎間板も柔軟だから、よく曲がるんです。それに加えて、猫は『なで肩』なんですよ。鎖骨が他の骨とくっついてなくて、肋骨も前後に細いから、頭の幅の穴からするっと抜けられるという」

なるほど。抱きかかえて測るのは、やっぱり大変ですね……。

どーじん先生
「動物病院だと診察台が体重計になってますよね。あんな感じで、自然に測れると良いんですけど。たとえばトイレ中に体重計測するとか。でも、そんな体重測れるトイレなんてあるのかな?」

きょろ
「お!それなら作れると思いますよ!」

(おっと、きょろさん。いつの間に!? )

猫用IoT体重計トイレを作ろう!

きょろ
「たぶん、こんな感じかな」

きょろさんは、おもむろに体重計にトイレを乗っけたようなイラストを描き始めました。

▲猫用IoT体重計トイレのラフスケッチ

きょろ
「猫って、いつトイレに行くのかわからないので、『Withings』みたいに体重を自動的に計測してログを残しておく形がいいですよね。基本構成はこんな感じ」

・ トイレの下にデジタル式の秤を仕込む
・ 常時重量を計測し、一定以上の重さがかかったら計量開始
・ 猫がトイレに乗った後の安定した総重量をW1とする
・ 猫がトイレから去った後の安定した総重量をW2とする
・ W1-W2=排泄後の猫の体重
・ 計測データはWi-Fi経由でサーバに送り、記録する

なるほど、バジルとジンジャーは結構体重が違うから、前回の体重からどちらの猫のデータなのかを自動判別することもできそう!

こうして、私たちの日曜大工ならぬ日曜電子工作プロジェクト「猫用IoT体重計トイレ」の開発がはじまりました。

ブレイク(コラム1)
Withings」は Wi-Fi接続の体重計を製造しているアメリカの家電メーカー。計測した体重と体脂肪率などのヘルスデータを、クラウド上で記録・管理し、スマホや連携サービスから様々な形で利用することができる。現在、体重計にとどまらず、スマートウォッチや ヘルスケアデバイスなどを幅広く展開している。

パーツの探し方・選び方

まずは、秤とマイコンに何を使うか、そして通信手段も含めて、実装に向けて使う部品を選びます。

きょろ
「秤に関してはある程度は精度も出したいので、感圧センサーで自作するのではなく、既製品を流用することにしよう。たとえば、量り売りをする店舗でレジと連携するような業務用の秤は、RS-232Cみたいな、いわゆるシリアルポートを備えているものが多い。そこからデータを取得できると簡単なんだけど……」

シリアルポートの付いている秤なんて個人でも入手できるの?

きょろ
「お、あるね! Amazonで見つかるのはこういうタイプ。値段も思ったより高くはなさそうだ」

▲米Amazonで探してみた

ブレイク(コラム2)
お気づきのように、これは米Amazonで検索した結果だ。日本ではシリアルポートが付いてるような業務用の秤には「計量法における計量器の規制」があり、販売にあたって特別な申請と許可が必要となる場合がある。必然と日本で販売されている秤は品質が高い(そして 値段もすごく高い)。しかし、電子工作でパーツとして用いるのであれば、個人輸入しちゃうのも手だ。製品は中国で作っていることが多いので、EbayやAlibabaなどで買うのがオススメだ。

マイコンは何を使うのがいいかな?

きょろ
「今回は、今Maker界隈で流行っているESP8266というWi-Fiモジュールを使おう!」

ブレイク(コラム3)
「ESP8266」はEspressif Systems社が供給しているWi-Fiチップ。現在は改良版のESP8266EXが供給されており、 一般向けにはプログラムを書き込むSPIフラッシュメモリと一緒にモジュール化したものが販売されている。ESP8266/ESP8266EXを搭載したモジュールはさまざまな種類が存在するが、なかでもESP-WROOM-02は日本の工事設計認証、いわゆる「技適マーク」を取得していて、日本国内でも使用可能だ。Amazonや秋月電子通商、スイッチサイエンスなどのオンラインショップで500円程度から購入できる。

でも、電子工作の定番と言えばArduino。最近はRaspberry Piも多い。ArduinoやRaspberry Piとはどう違うの?

きょろ
「ESP8266は基本的にはWi-Fiモジュールなんだけど、オープンソースのライブラリを使うことによってArduino IDE(開発環境)でコードを書き、プログラムを転送して単体でマイコンとして動かすことができるんだ。それこそ本家のArduinoみたいにね。しかも、値段も安くて小さい。モジュール単体でプログラムの実行からデバイスの制御、インターネットへの接続までできるから、すごく便利なんだ」

猫用トイレの下にずっと据え置きしておくものだし、高価なマイコンはちょっと使いにくいかなって思ってたから、ピッタリ!

きょろ
「電子工作で使用するパーツは、使う場所や目的に応じて使い分けることが重要だよ。ESP8266はArduinoと同じ開発環境が使えると言っても、使い始めるための回路の組み立てや環境の準備が必要だし、長所も短所もある。もし手持ちで余っているArduinoがあるならそれを活用してもいいし、Linuxに慣れているならRaspberry Piもありだ」

ということで、今回は新しいチャレンジも兼ねてESP-WROOM-02を使うことにしました。パーツは秋月電子通商のオンラインサイトで購入します。

購入したもの

・ Wi-Fiモジュール ESP-WROOM-02 DIP化キット
・ ブレッドボード
・ ジャンプワイヤー
・ LED
・ USBシリアル変換モジュール

ブレットボードとジャンプワイヤーを使って電子回路を組んでいくので、ブレッドボードにそのまま挿せるようDIP化キットを選びました。

ブレイク(コラム4)
「DIP」は、ざっくりいうと下向きにリード(足)が出ている電子パーツのことで、その足を基板に通して半田付け(実装)する。ブレッドボードの場合、空いている穴に足を挿す形で回路を組む。


▲Wi-Fiモジュール ESP-WROOM-02 DIP化キット


▲ブレッドボード。ソケット(穴)に部品を挿し込むことで電子回路を組めるボード。主に試作用に用いる


▲ジャンプワイヤー。ブレッドボードと組み合わせて配線する際などに用いるワイヤー


▲LED(発光ダイオード)


▲USBシリアル変換モジュール。PCとマイコンをつなぐためにUSBとシリアルポート(UART)を変換するパーツ

これらのパーツを組み合わせて、Arduinoとして動作するESP8266の基板を作っていきます。

きょろ
「じゃあ、さっそくLチカだ!」

あ、きょろさん、ちょっと待って。
背中にバジルとジンジャーからの、熱い視線を感じるんだけど……。

ごめんごめん、遊ぼうかジンジャー……じゃなくて、その真剣な顔はご飯かな?

というわけで、ESP-WROOM-02でLチカは次回!


ジンジャーの体重:現在6.8kg



執筆:はとね(大島 孝子)
きょろ(井上 恭輔)
協力:どーじん先生(宮本 道人)
編集:大内 孝子

著者プロフィール

はとね(大島 孝子)
アメリカ西海岸で日々奮闘するバックエンド寄りのエンジニア。
高校時代パソコン研究部に所属し、NHK BS2 高校生ITキング決定戦というTV番組で全国3位、Web教材開発コンテストThinkQuest@JAPAN 2004で最優秀賞を受賞。2011年に、情報処理推進機構が主催する「未踏ソフトウェア創造事業」に採択される。2012年にインターネット広告代理店へ入社して米国駐在員として渡米し、2014年にAT&T Internet of Things Hackathon and Accelerator SeriesというIoTでは最大級のハッカソンでFooDrawというプロダクトを制作して全米1位を獲得。現在もソフトウェアエンジニアとして働きながら、US事業の拡大に努めている。

きょろ(井上 恭輔)
Webやアプリの開発に留まらず、ハードウェアの設計や量産まで幅広く手がけるエンジニア。高専在学中の2006年に情報処理推進機構が主催する「未踏ソフトウェア創造事業」に採択され、スーパークリエータ/天才プログラマーの認定を受ける。
2008年にミクシィ入社。iOS/Android向けテスト配信サービス「DeployGate」の立ち上げにを行い、2014年に寿退職ののち渡米。
日経BP主催のAndroid Application Award(A3)において優秀賞および特別賞、高専プロコン最優秀賞&文部科学大臣賞、AT&T IoT Hackathon 全米部門優勝など。
現在の趣味はドローン撮影とダイエット。

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