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VRコンテンツはいかにして開発するか?「VR Tech Tokyo #5」でそのコツが解明された

2017.02.21 Category:勉強会・イベント Tag: , , , ,

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第5回となるVRコンテンツの開発者向け勉強会「VR Tech Tokyo」。
今回はバンダイナムコエンターテイメント VR ZONE Project i Canの小山順一朗さんによるVRコンテンツを企画するコツなど、VRコンテンツの開発のコツに関してさまざまなヒントが語られた。その概要を紹介していこう。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

VRアクティビティの企画作りにはゲーム制作経験が邪魔

VR関連の開発者向け勉強会「VR Tech Tokyo」。
第5回目となる今回は、土曜日の午後に開催。時間的にも余裕のある中で、セッションが開催され、また同セッションで紹介されたさまざまなVRがデモ展示された。

最初に登壇したのは、バンダイナムコエンターテインメント VR ZONE Project i Can 小山順一朗さん。セッションタイルは「VRアクティビティ開発着手前に決める大切なこと」。

小山さんはVR ZONEを手がける前は、アーケードゲームのプロデューサーを務めていた。有名なものも多いが、そのかげには日の目をあまり見なかった黒歴史のアーケードゲームも数多く存在するという。

プロデューサーになる前の10年間は、メカトロのエンジニアとして業務に従事していた。1990年頃。当時はVRが真っ盛りの時期だが、VRの実装には四苦八苦していた。

一昨年、VRデバイスが飛躍的に進化したのをきっかけに、実績を出すべきだと企画したのがVR ZONEである。VR ZONEはゲームとは呼ばず、「VRアクティビティ」と呼んでいる。

VRアクティビティの条件は次の3つ。

  1. VR市場発展のためにVRエンタメの素晴らしい可能性をリア充にお伝えする。
  2. 5分間で上記を実感していただく(多くの人に感じてほしい)
  3. もう1回やりたい(友達にやらせたい)

これらの条件を満たすものを作ることとなった。

企画に求められるのは、

  • 期待通りにすること
  • 予想は越えること

である。

社内でVR部が創設され、メンバーも増えた。そこで大きなテーマを与えて、企画を出してもらったのだが、良い企画ができるチームとそうでないチームがあることに気付いた。

なぜ、このような違いが出るのか。

それはゲーム制作経験が邪魔をするということである。ゲームは考えて行動する=ルールを遊ぶのが楽しいもの。

そして、ビデオゲームは創作世界を自分の力で楽しめる手段であり、ゲーム制作者はいろんな概念や属性など、新しいフィクションを作るのが得意である。

また、VR技術を既存ビデオゲームとの差別化手段として使っていたのも理由の一つ。確かに既存のビデオゲームのVR技術を用いると、「没入感半端ないよね」という感想は聞こえるが、それは比較対象がビデオゲームだからこその感想だ。これはVRアクティビティではない。

VRは実体験の置き換え

VRは実体験との置き換えである。つまり比較対象は現実でなければならない。例えばスキーがテーマだとすると、現実のスキーが比較対象となる。

課題は実在感をどこまで高められるかなのだ。とにかく実在感に徹底的にこだわること。そのためには経験としての記憶に刻ませること。さらにそのためには反射行動を引き起こさせることである。

反射行動は条件反射と無条件反射の2つがある。条件反射とは後天的に経験によって引き起こされる反射行動で、代表的なものがパブロフの犬である。

一方の無条件反射は先天的に備わっている反射行動で、転びそうになると手を突くというのもその一例だ。

VRゲームを楽しむと、身体は正直に反応する。そして身体が信じると気持ちも信じてしまう。図のように後で記憶のストック系に報告が入り、後で感情がわいてくる。

この仮説から考えると、条件反射と無条件反射を上手く組み合わせることが、実在感として重要だ。だからこそ、これまでのゲームの面白さをVRでどう楽しませるのかという企画者の癖を頭から切り離すことが重要なのである。

最優先課題は、どうしたら本当だと信じてもらえるか。これに心血を注ぐことである。

そしてもうVRを楽しむ前に一つすべきことがある。体験前に期待させる要点をはっきり示し、暗示にかけるのである。エクスポージャー(曝露法)を利用するのだ。

例えばガンダムが登場するVRアクティビティであれば

アスファルト片にあたる、かもしれない
ガンダムに踏まれる かもしれない
殺人鬼に襲われる かもしれない
ホームから転落する かもしれない
下に落ちてしまう かもしれない
木に激突する かもしれない

というようなことをイメージできるよう、体験前に暗示をかけるのである。そうすることで、心に期待と不安が入り交じった状態を形成する。そしてVR世界にユーザーが入ったら期待通りに行動できる仕様にする。

反射行動で身体が信じた瞬間、気持ちも信じてしまうので、あとは企画者のやりたい放題となる。とにかくゲームの面白さを味わわせたいという気持ちをぐっとこらえることが大事である。

また「期待通りにすること」「予想を超えること」が必要になる。成功と失敗の概念が実在感を高めることになる。

この点については、ゲーム制作の経験がフルに活かすことができる。
行動に応じて起こるさまざまなリアクションを仕様化する力やプレイ感覚を作る力が求められるからだ。

「空を飛ぶ」というテーマにしたVRアクティビティとは

例えば「空を飛ぶ」というテーマを実現するVRアクティビティを作るとしよう。

「空を自由に飛びたい」という期待をそのまま実現するだけでは、「ふうん、なるほど。でも何かもの足りない」という感想にしかならない。

ではどんな効果を追加するか。もっとスピードを上げる、障害物ギリギリを飛ぶようにしてみる、的を出してシューティングできるようにする…。このようなデスマーチが始まるだけだ。

「空を自由に飛びたい」という健在ニーズの裏には空を飛べないので潜在ニーズがある。人間は空を飛べないというこの認識を大切に扱うことが大事なのだ。

屋上にいる。やっと自分の力でなんとか浮かんだ。10cm浮かんだぞ、1メートル浮かんだ。よしコツをつかんできたぞ。今度浮かんできたら前進してみよう。うわあ、下は人や車が豆粒に見える。

うわ、横から突風が、流されたり、気を抜いた瞬間だけ高度を落とすという仕様にするのだ。そういった緊張感の中で飛べるありがたさを実感する。つまり空を飛んでガンシューティングするようなことをするようなものを作ることではない。

VRアクティビティは大きな期待は裏切ってはいけない。ただし予想は斜め上を超えてしまおう。VRにはその力は十分ある。

国立天文台が開発するアルマ望遠鏡VRツアー

次に登壇したのは、国立天文台 チリ観測所(アルマ望遠鏡)の広報スタッフを務める額谷宙彦さん。

大学ではメディアアート専攻。PS2向けゲームのプランナーを経て、サイエンスの世界へ。立体ドームシアター向け科学可視化コンテンツの作成などに携わっている。

VRについては、ドーム映像の延長として興味があり、Oculus Rift DK1を体験して衝撃を受け、DK2を購入。仕事で使ってみたくなり、今に至る。

セッションタイトルは「国立天文台でのVRでの取り組み(1)アルマ望遠鏡VRツアー」。アルマとはアタカマミリ波サブミリ波干渉計のこと。アルマ望遠鏡は日本・北米・欧州をはじめとする21の国と地域がチリ・アタカマ砂漠で共同運用している世界最大の電波望遠鏡。

標高5000メートル、最大直径16kmのエリアに66台のパラボラアンテナを展開。それら全体を光ファイバでリンクさせて一つの巨大望遠鏡(干渉計)として機能させるという望遠鏡だ。

これにより天体が放つ微弱な電波を捉え、星や惑星の誕生、銀河の進化、宇宙における生命の起源の謎に迫りつつある。

なぜその望遠鏡のツアーにVRを採用するのか。その背景には大きすぎて伝わらない問題がある。

パラボラアンテナのサイズは12メートル、もしくは7メートル。それを16キロメートル(山手線内側と同じ面積)で展開している。

つまり、写真でも映像でもフレームに入りきらないのだ。そこでVRツアーが最適解として選択。なぜならVRは非立体のコンテンツでも大きさが伝わりやすいからだ。

国立天文台三鷹キャンパスでは毎年秋に特別公開を行っている。そこで専用の部屋を設け、アルマ望遠鏡のVRツアーを行っている。

2014年、15年のシステム構成は資料の通り。

このときのコンテンツはスタッフが現地に行って撮影した360度静止画とプラネタリウム番組向け実写動画の組み合わせ、没入感を出した。

体験してくれた方の満足度は高かったが、VR自体の認知度が低かったため、行列が起こることなどなかった。
昨年の特別公開ではハードウェアなども全部以下のように刷新。

モバイル展示が可能になり、長野県にある野辺山宇宙電波観測所の特別公開でもVR展示を行った。

今後の展望については、アルマ望遠鏡現地からのライブパノラマ画像配信との連携を行ったり、敷地内をCGモデル化して移動可能にしたりするなど、よりライブに、インタラクティブにし、Google Cardboardやハコスコでの配信などをすることで、より多くの人に見てもらうような仕掛けを行っていく。

「コンシューマVR」という新たなツールを使って、人々と天文学(新たな宇宙観)との接点を最大化していきたいと考えている。

天文シミュレーションソフト「Mitaka」のVR対応

続いて国立天文台でのVRでの取り組み(2)として国立天文台の加藤恒彦さんが登壇。セッションタイトルは「天文シミュレーションソフト『Mitaka』のVR対応について」。

国立天文台では、宇宙・天文の観測・理論・シミュレーションの成果をわかりやすく可視化して一般の人に見せるため、可視化プロジェクト4次元デジタル宇宙(4D2U)プロジェクトを実施している。

プロジェクトの柱は大きく2つ。その一つが「Mitaka」である。

Mitakaは4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」、天文学の最新の成果に基づいた宇宙の姿を見るためのソフトウェア。ズームアウトしながら見ることができる。

Mitakaが目指すのは、なるべく最新の観測データや理論的なモデルを使って、科学に基づいた最新の宇宙像を見せることだ。

Mitakaはフリーソフトとして4D2UのWebサイトで公開しているので、ぜひ、使ってみてほしい。

簡単だが、もう一つのプロジェクトについても紹介。もう一つのプロジェクトがシミュレーション・ムービーで、スーパーコンピュータによる大規模シミュレーションの結果を可視化し、立体視できるムービーコンテンツである。

4D2Uドームシアター(東京都三鷹市の国立天文台にある。直径10メートルの立体視ドームシアター)でMitakaとあわせて上映されているほか、4D2UのWebサイトからダウンロードが可能。またYouTubeでVR版ムービーも公開している(Google Cardboard対応)。

MitakaのVR対応について。昨年、Oculus Rift CV1(製品版)に対応。位置トラッキングをしているので、前後左右上下、全方位から天体を立体視することが可能に。土星や銀河系、探査機などが本当に目の前に浮かんでいるように見える。

「Mitaka VR」と銘打って、VR版Mitakaの体験会を国立天文台の特別公開日(水沢、野辺山、三鷹)で実施している。三鷹で行った体験会では、ほとんどの人が臨場感を強く感じられたという声が聞かれた。

HTC Viveにも対応しており、最大3メートル×4メートルのルームスケール、VRコントローラで操作する。また現在、スマホVR版(iPhone)も開発中。「Mitaka for VR」の正式版を近日リリースする予定だ。
(※追記:2月21日にリリースされた)

かわいいミクさんと遊べる「MikuTimeVR」

4番目に登壇したのは、きだち(@kidach1)さん。きだちさんは、今回の会場となったアカツキでゲームやスマホアプリなどを開発している。

セッションタイトルは「Oculus Touch対応アプリMikuTimeVRを育てている話」。

「MikuTimeVR」は、個人で開発しているVRコンテンツ。ダンスモードと動画鑑賞モードの2つのモードを用意。ダンスモードでは自分のハンドモーションに従って、ミクさんが近づいたりしてくれるというもの。

また動画鑑賞モードでは、YouTube動画などを球体に映し、自由に再生ができる。球体もハンドモーションで大きくしたり小さくできたりするというコンテンツだ。

Twitter上でαテスターを募っており、そこそこ反響をもらっている。OculusとViveの両方に対応しており、引き続きテスターは募集中とのこと(@kidach1 twitter.com/kidach1 まで連絡を)。

ベースコンセプトは「動くミクさん、素敵な世界」で、インタラクティブなミクさんと素敵な音楽や動画、世界を楽しむコンテンツになっている。

開発時に留意しているのは以下の3点だ。

  1. 現実に即す(もしくは超える)
  2. 自由度を高くすれば良いというものでもない
  3. 神は細部に宿る(VRだとより顕著)

1は、直感的に球体やスクリーンの操作(移動・回転・拡縮等)ができる(現実に即す)、遠くのオブジェクトを引き寄せられる、寝ながら動画鑑賞できる(現実を超える)ということ。OculusTouchを最大限に活かすようにしている。一方で、すべてが自由にできればいいということでもない。

自由度を高めすぎるとユーザーに本来体験してもらいたかった体験に集中してもらえなくなるので、例えば手の握り込みの自由度などは意図的に制限している。

3の神は細部に宿るについて。ミクさんの「生きている感」を増すために視線や眼球運動、呼吸などの他に、歩く時の自然さを増すための工夫なども取り入れている。

今後は、例えば再生中の動画のビートに合わせて何かができる(ダンスモードと動画鑑賞モードをシームレスに繋ぐ)といった機能等を検討している。

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今のタイミングでVR開発をすると、世界観のデザインまでプログラマが行えるという面白さがある。だが、黎明期だけにコンテンツを作る責任も生じる。

スタンダードを決めるかも知れないからこそ、今後も魂を込めてコンテンツを作っていく。

Web VRでできること、できないこと

5番目に登壇したのは、VOYAGE GROUP VR室長 伊藤淳さん。

同社で4年ほどスマホアプリ、Webアプリのプロデューサーを務め、昨年10月にVR室を立ち上げたという。

セッションタイトルは「ここまできた!2017年 Web VRでできること・できないこと」。

Web VRとは、Webブラウザで楽しめるVRコンテンツのことだ。基本的にはHTMLとJavaScriptで実装。現状大きく分けて2種類の環境があるが、今日はスマホベースのモノを中心に話す。

WebVRの何がすごいのか。A-PainterというWebVRのアプリケーションがある(Tilt BrushをA-Frame移植したもの)。このアプリがすごいのは、描き終わった作品をボタン一つでURLが発行でき、リンク一つでシェアできること。

リフトがつながっていれば、さらに拡張できる。つまり圧倒的なアクセスのしやすさ・シェアのシェアしやすさがある。

●WebVRのメリット

  • アプリのインストール不要
  • URLでコンテンツを誰にでもすぐ共有
  • アプリプラットフォームの審査不要

●WebVRのデメリット

  • 歴史が浅いのでUnity等のゲームエンジンに比べ、便利なライブラリ・アセットが少ない
  • 重いアセットを実行時に読み込むのがきつい

WebVRにが向いているコンテンツとは

  • アクセスのしやすさ、シェアしやすさが重要な意味を持つコンテンツ
  • (スマホベースの場合)カーソルによるフューズなど、簡単な操作でストレスなく完結できるコンテンツ

一方、Web VRが向かないコンテンツとは

  • 重いモデルを扱ったりレンダリング量が多かったりするコンテンツ
  • (スマホベースの場合)ハンドコントローラーがコンテンツ

Web VRの開発フレームワークには、次のようなものがある。

下はA-Frameの実装例である。

Web VRでは何ができることとは、3Dモデルの読み込み、物理演算、リアルタイムコミュニケーション、MMD(MikuMikuDance:初音ミクなどのボーカロイドキャラクターの3Dモデルを使用できること)、ページ遷移など。

余談だが、主要Web VRフレームワークでは、FBXのボーンアニメーションに対応しているライブラリがまだないので、コミットしてヒーローになれるチャンスもある。

WebVRは意外に進んでいるので、ぜひ、触ってみよう。

VRアトラクション「ソロモン・カーペット」のメイキング披露

6番目に登壇したのは、Unity・UE4エンジニアでハシラスのCTO・古林克臣さん。

セッションタイトルは「VRアトラクションの制作~『ソロモン・カーペット』メイキング」。

ハシラスはVRアトラクションの製作を得意とするコンテンツ制作会社。Oculus Rift DK1の頃からVRコンテンツを作っていたメンバーが集まって立ち上げた。

ハードウェアとソフトウェアのエンジニアがおり、大型筐体の設計・製造ができる。常設VRアトラクションを展開しており、そのうちの一つが「ソロモン・カーペット」。アドアーズ渋谷店で2016年12月より稼働している。

ソロモン・カーペットはシリンダーで傾くカーペット筐体と大型送風ファン2基(サーバから制御コマンドでシーケンス駆動)、裏側はサーバ2台(冗長構成)+クライアント6台で構成。クライアントはHTC ViveをつけたバックパックPC(MSI VR One)。

2人が体験している間に次の2人がPCを背負って待機するため予備2台を用意。これによってマルチプレイ・ケーブルレスのルームスケール+ライドVRを実現している。

ソフトウェアはUnityで開発。Unetを初めて使用するため、まずは検証を行い、ヘッドセットとモーションコントローラの同期ができることを確認した。

シンボリックリンクを使うと、一つのプロジェクトファイルを複数のエディタで開いて、サーバ・クライアント連携のテストが可能になるので便利なこともわかった。

プレイヤーキャラクターはFinal IKアセットのVRIKを採用。これはヘッドセットの位置に合わせてキャラクターが歩いてくれるコンポーネントだ。

しかし使ってみると、カーペットを飛ばすとカーペット上のキャラクターがどことこと歩いて行ってしまうなど、問題が発覚した。

まずシーンのどこかでIKを解決して、そのTransformをカーペット上のモデルに毎フレームコピーすることで対処した。

ソロモン・カーペットの体験時間は5分。その間に最大限充実した体験をしてもらうことに注力している。

ゲーム時間による高速な頭出しも実現。キーボードの1~9で特定のシーンにジャンプしたり、何か修正をしたらすぐに確認できるようにした。Viveによるモーションキャプチャも開発している。

課題はPCとVRヘッドセット1つでもなかなか動かないことがあるのに、これだけ構成が複雑になるととにかくいろんなトラブルが起きて運用負荷がかかること。

そこでノウハウの蓄積、安定動作するフレームワーク・自動テスト環境の整備とハードウェアのコンポーネント化を実施している。

「マルチプレイで体験時間数分のVRアトラクション」というフォーマットのものは楽に作れるようになったので、違うこともやっていく予定。

B2B、アカデミック、コンシューマVR、MRなど、必ずしもVRアトラクションにはこだわってはいないので、何か興味があれば検索してたずねてほしい。

中国、韓国、台湾、東南アジアのVR市場動向

7番目に登壇したのは、金葵娟さん。スマホゲームの海外展開や女性向けのVR向け体験会を実施したりしている。

毎月1~3カ国ぐらい出張している金さんのセッションタイトルは「アジアで見てきた!VRのいま」。タイトルどおり、実際に金さんが見てきたアジアのVRのいまを伝えてくれるセッションである。

まずは中国。百度指数で見ると、VRは16年より話題となっており、イベントも大盛り上がりだった。B2B向けにもVR系のサミットやカンファレンスが多数、開催されている。

資金調達も投資も活発で、規模も大きい。街中でもVRゲームセンターと呼ばれるものも増えている。各施設の規模とクオリティはまちまちだ。

小米ショップや街中でも安いスマホ向けHMDなどが売られており、入手しやすい状況となっている。

中国のマーケットではデバイスの開発社と技術開発社系が多く、コンテンツ提供社は多くはない。2016年はハードウェア競争が激化。

一方で中国の消費者も開発者も、品質の高いハードウェアを望んでいる状況である。

次に韓国。2016年5月には「Korea VR Symposium」が、10月には「Korea VR summit」が開催された。

コンテンツはアトラクション系が目立っていた。韓国最大のゲームショウ「G-Star」では、昨年と比べてVR出展は増えたものの、盛り上がりは今一つと感じた。

街中の施設も増えており、カンナムにVR Plus CafeというVR体験スペースが16年7月にオープン。釜山店では1日の売り上げ約63万円を突破したという。VR Plus Cafeはさらに6店舗新規オープンをする予定である。

またMONSTER VRはVR体験空間「CUBE VR」を開発し、中国進出も検討している。さらに中国のHONGBIN NETWORKは韓国法人を設立し、17年上半期を目標にVRテーマパークをオープンすると発表している。

韓国政府も力を入れており、未来創造科学部(省)はVR・AR市場の投資環境を作るために、17年までに400億ウォン規模(約37億円)のファンドを創出すると発表している。

台湾でもVR体験施設が続々誕生している。HTCが台北の三創生活園區(Syntrend Creative Park)に期間限定でVR体験施設「VIVELAND」をオープンしたほか、高雄市にも「VR+」という体験施設がオープンした。

今年の台北ゲームショウは大盛り上がりで、B2CのHTC Viveブースのほか、B2BにもVR系の出展が増えた。VRマーケット自体はこれから立ち上がっていくと思われる。

最後は東南アジアのVR事情について。今年、マレーシアのクアラルンプールに「EXA」というVRテーマパークがオープンする予定など、体験施設のさらなる普及が考えられる。

「エニグマスフィア」はいかにして生まれたのか

最後に登壇したのは、よむネコ代表の新 清士さん。セッションタイトルは「“VR空間特有のリアル”を追え~メイキング『エニグマスフィア』~」。

よむネコのミッションは、「VR空間での居心地が再校に感じられる複数ユーザーのインタラクション環境の創成により社会の発展に貢献すること」である。

「エニグマスフィア」という脱出ゲームをいかにVRで面白さを追求できるのか、15年12月に企画を立て、約1年間かけてリリースした。

まずはプロトタイプで実現する3項目の仮説を設定した。

1.量産可能なものを保証する

目的は1カ月に1本作れる謎コンポーネント群を生み出せるかを確認することである。

2.VRならではの体感

目的はTouchコントローラと3Dサウンドによる面白さで、ゴールを楽しめるかを確認すること。

3.ネット上でのコミュニケーション

目的はVR内での強力プレート、VR外のプレイ動画の訴求を確認することである。

最初の6カ月間はずっと悪戦苦闘していた。昨年の今頃、海外ではRazer Hydraがテスト開発されていることを知り、購入。スクラップアンドビルドで作っていった。

16年2月に開催されたOcuFesに「炎からの脱出」を実装。狭い橋を歩き、炎のエフェクトを強力に出すというVRならではの非現実を狙った。

幸い評判はよかったが、そんなに甘くはなかった。

OcuFes版の課題の第一はリプレイ性の低さである。謎は1度答えを知ってしまうと終わりだからだ。第二は脱出ゲームの謎が解けない人が続出したこと。多くの人はVR空間で手を使うことが初めてであり、ヒントを出しても解けない人が続出した。

難度を下げるしかないと考えた。第三にコントローラ移動では酔う人が続出したことである。3月30日に実施したデモデイでは、メンターの方からかなりダメ出しを受けた。

4月は「VRビジネスの衝撃」という新書の原稿チェックに時間を取られ、現場作業が進まず、チームは混乱を極めた。

そんなとき、転機を与えてくれたのが、次の書籍である。「リーンスタートアップ」(エリック・リース著)。この本に従い、ユーザーテストを実施し、テータをとることにした。

その様子を撮影し、本当に現状のゲームの問題点を明らかにすることにしたのである。改めて「このゲームはおもしろくない」ということがわかった。

そして移動はコントローラ方式から、ワープ方式に切り替えた。すると炎などの迫力が一切なくなるというゲームの根本を揺るがすことが発覚。その後もユーザーテストを繰り返し、一本橋や炎の演出は捨てることにした。

ハンマーを使って移動しながらモノを壊していくという、探索やギミックを組み合わせた脱出ゲームというアプローチで開発を進めることにしたのだ。

6月4日 Unreal Meetup Tokyoに出展し、アプローチの正しさも確認した。ユーザーの意見もゲーム中身に関するものへと移っていった。6月25日のユーザーテストでマルチプレイの検証を行ったところ、面白くなることが確認された。

Oculus Touchの製品版をローンチしたのは12月8日。製品版の開発は実質3カ月で行った。課題もあった。普及ハード台数と販売本数にネックがあり、マルチプレイの体験が難しいこと。

難易度低めのゲームにし、VR体験の満足度を高めるようにしたが、シングルではもの足りないという感想が多かった。

一方、「梅田ジョイポリス」バージョンでは、Oculus版の内容をViveで稼働させ、プレイ時間を20分前後で終わるように短くした。ロケーションテストを実施したところ、ユーザーのアンケート結果も良好。VR酔いも全くなく、店舗も安心して勧められるという。

今後の課題は「どうやって多くの人にマルチで楽しんでもらえるようにするか」。そこで現在、大型アップデートバージョンを開発中である。

またTokyo VR Startupsでは、4月より第3期の応募を開始。最大5社に投資する予定。作業環境なども用意しているので、スタートアップ参入を検討している方は、ぜひ、応募してほしい。

VRビジネスはまだまだ黎明期で、まだ専門家もいない。だからこそ、エンジニアが企画から携われる分野。しかも第一人者になれる可能性もある。

関心があるなら、今が飛び込むチャンスだ。

次回の「VR Tech Tokyo #6」は3月19日(日) 開催!

次回のVR Tech Tokyo #6は、2017年3月19日(日)に、日本マイクロソフト(品川本社)で開催いたします。

Windows Holographic関連のセッションをはじめとして、HoloLensを使って空間上に穴を開け、別の空間へ移動する体験を得られるアプリを制作したとしてTwitterで話題になった@VoxelKeiさんのショートトークなど、全部で8つの講演を予定しています。

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