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“現代の魔法使い”落合陽一さんが語った「ミクスドリアリティからデジタルネイチャーへ」

2017.05.12 Category:勉強会・イベント Tag: , , , ,

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国内外でさまざまなアートコンペ、デザイン賞などで受賞するなど、世界でも注目されているメディアアーティスト落合陽一さん。落合さんが語るデジタルネイチャーの世界とは──CodeIQ感謝祭での基調講演を再現レポートで紹介します。 by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

エジソンは発明王ではなく、メディアアーティストだった!?

エジソンは19世紀に生きた最高にチャーミングな男です。何がチャーミングかというと、発想したモノづくりが100年ぐらい早くすぎて、すべてこけてしまったこと。

例えばエジソンは「映像装置は一人1個持つべきだ」と言い、キネトグラフ(撮影機)とキネトスコープ(映像を見る装置)を作ったんですね。

またエジソンは「音楽は体感すべきものであり、蓄音技術は他の用途で使うべきだ」とも語っていました。さらにエジソンは「あるべき電力供給は直流だ」とも。

今では確かに私たちは直流世界に生きている。このようにエジソンが言っていることはすべて未来にいきる私たちにとっては当たっていることなんですが、いずれも早すぎて当時の人たちにはウケなかった。そこがチャーミングなところなんです。

私はエジソンを発明家というよりは、メディアアーティストに近いと捉えています。それは彼の技術を見ていると、芸術のような価値を持っていたと考えられるから。

だからこそ、私はエジソンするという意味を含めて、メディアアーティストを名乗り、そしてエジソン以来の普遍だったオーディオビジュアルをアップデートすることが役割だと考えているんです。

落合 陽一さん
筑波大学 助教・デジタルネイチャー研究室 主宰。筑波大でメディア芸術を学び、東京大学を短縮修了(飛び級)して博士号を取得。2015年より筑波大学助教、デジタルネイチャー研究室主宰。経産省よりIPA認定未踏スーパークリエータ、総務省より異能vationに選ばれた。BBC、CNN、Discovery、TEDxTokyoなどメディア出演多数。国内外の論文賞やアートコンペ、デザイン賞など受賞歴多数。人呼んで〈現代の魔法使い〉。

では私はメディアアーティストとして、これまでどんな作品を世に出してきたのか。

例えば空中に絵を描き、触ると感じられることができる「Fairy Lights in Femtoseconds」もその一つ。これはフェムト秒レーザーという100兆分の3秒にエネルギーを凝縮できるパルスレーダーを使って空中にプラズマを描く技術です。

これで本当に3次元空間に絵が描け、しかも絵は低エネルギーでプラズマ化できるので、触ると感じられる。どうしたら映像や物質でもないものができるか、メディア技術の発展史の先を作るのが私の仕事。その基本となるのが正しいホログラムを計算する技術なのです。

つまりデータを正しいホログラムにできれば、あとは超音波、レーザー、電波で表示するかは好き勝手にできるということ。

研究分野はそれだけに留まっていません。物質自体にも興味を持っていて、非常に薄い薄膜の表面の反射分布をいじりながら、後ろから超音波を当てた時に、どうやったらキラキラするか、ざらざらするかという物質的な見た目を作り出す研究も行っています。

素人目にはプロジェクターに光を当てているプロジェクションマッピングのように見えるかも知れませんが、これを400フレームノートの高速カメラで撮影すると、そうではないことがわかります。

膜の状態が高速に切り替わり、それが人間の目にどう見えるかを計算して、絵をはめ込んでいるのです。そのほかにも、超音波で物体のざらざらやつるつるという感覚を作り出すという研究もしています。

超音波は人には聞こえない音ですが、その3次元的な音の分布をコンピュータで計算すると、特定の力場を空中に作ったり、触覚を作ったり、形を作ったりできるのではないか。そこから生まれたのが音響浮遊。これがすごいのは浮いているからではないんです。

いまは3次元的にホログラム分布をきちんと計算しているところ。この技術により、あらゆるものが非接触で運べるようにする、目に見えないロボットアームへの実現が近づきました。

今年発表予定の作品は、空間の1点でのみ音を出す超指向性スピーカー。違う場所にいる人には違う音が届いたりするようなオーディオスピーカーを研究しています。

26年後の未来を予想して考える

米パロアルト研究所の技術主任であり、ユビキタスコンピューティングの祖としても知られているマーク・ワイザーは、26年前に予測した21世紀のコンピューティングは現在の環境そのもの。つまり、今私たちが考えなければならないのは、26年後がどうなるのかということなんです。

例えば水槽の中にいる金魚。しかしディスプレイの解像度が上がると、水槽の金魚とバーチャルの金魚は区別がつかなくなる。しかも金魚は触ることはない。酸素の音がポコポコしていれば誰も気付かない。

ただし、犬の場合は実際に触れてモフモフしたいという欲求がある。金魚のように映し出すだけではうまくいかない。つまり、触らないモノからミックスドリアリティになると考えられるんです。

一番ホットだと思っているのは、マテリアルとディスプレイ、人間を動かすということ。なぜなら、ロボティクスは成長してきたが、人間をロボットとして扱うことはやってきていないから(人権問題や制御問題などもあるので)。

コンピュータグラフィクスは発展し、ディスプレイの中ではハリーポッタの魔法など何でもできるようになった。ただ、現実空間ではそれは使えない。そこはこれからの解決課題ですね。

次にマテリアル。材料研究は行われてきたが、コンピューティショナルな材料研究は行われてきていないので、そこも進めたいと思っています。

現在、カーメーカーの人と共に、モノの加工プロセスを研究し、私たちがデジタルでやっているようなことを、手触りを残したまま作るかということにチャレンジしています。

ここさえクリアできれば、例えば羽子板がスマホにもできる。そしてコンピュータでシミュレーションして、形を作る。作った形通りに電圧をかけると動く素材を作る。

このようなコンピューティショナルな素材の研究は、次世代のIoTに変わっていくためには不可欠だからです。

そしてもう一つ重要なのは、ディスプレイ。私たちがいうディスプレイ領域とはメカニクス(ロボットとか)、オーディオ(音で聞く)、目で見る、触覚を与えるという4領域。例えば心臓みたいに波打つディスプレイなど、触覚ディスプレイへのチャレンジもその一例。

中に磁性流体を入れて膜を張り、その膜自体に放電がかかり、ざらざらとやわらかさを同時に出すと人間の指先はどういう風に感じとるかなどの研究しています。

これまでは触覚技術は単純な一個のモーターを採用し、それでどうやって触覚を与えるかという研究を行っていましたが、今は合わせ技にしてどうすれば複雑なテクスチャーにしていくことに取り組んでいます。

ロボット系では人間が動きをいれると、その動き通りの動きをするロボットをコンピュータが自動設計して、3Dプリンターでアウトプットしてくれるところまでの自動化はできている。

あとはそのような骨組みを誰がどうやって作るのかを研究しています。筋肉のモデル化と視聴覚のモデル化は次のミックスドリアリティの世界では重要になるからです。

人間はみんな頭にホロレンズを付ける時が来る!?

私が思うミックスドリアリティの世界とは、ARとVRによる筋肉ロボットの社会。人間はみんな頭にホロレンズをつけ、筋肉をホロレンズの言われたとおりに動かす。

そうすると筋肉ロボットとして成立します。例えばコンビニで接客して中国人に何か言われても、ホロレンズが翻訳してくれればその通りの品を渡すことができます。

このように技術習得をしなくても人間は働けるようになることは、これからの人口減少社会にとってはすごく重要になる。

第二に介護の自動化・遠隔化。私たちの研究室は最近、車椅子の自動運転などにも取り組んでいる。どうすれば身体が動かなくなった人を動かすことができるのか、人間がわざわざ押す必要はない車椅子の実現などを目指しています。

このような作品を生み出していることで、私は現代の魔法使いとも呼ばれたりもする。この魔法は便利な言葉だが、同時に危ない言葉でもあります。

ドイツの社会学者であるマックス・ヴェーバーは、「魔術から科学へ」という言葉を使った。科学が出てきたことでまじないは解けたという意味ですが、科学によって世界は再魔術化していると言われ始めている。コンピュータはその代表例ですね。

私たちが入力して出力される関係性は、書いたプログラマしかわからない。それがFPGAの形で提供されていれば、それはなおさら。

この状況は極めて魔術的な世界になっているということ。これを魔術でない世界にしていくのか、魔術のママで乗り切るのか、どっちか選ばないといけない。私は、専門家以外は魔術のママ乗り切るのがいいと思っているんです。

私が想像する未来は、物質的なモノと映像的なモノの区別がなくなり、コンピュータの中から操れる、つまりそろばんが動いたり、人間が浮いたり、空中に何でも表示できたりする空間と、それを受容できるヘッドマウントディスプレイを付けた人間が共存する世界です。

私たちはあらゆるものとデジタル空間と新和性を見つけて生活していくことになる。そしてそのデジタルネイチャーの時代は2040年より前にくるのではと予想しています。

だからこそ、この世界の空間と時間にいかにコンピュータを使ってアプローチをしていくかが重要になっていくのです。

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