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社会インフラとなったオープンソースコミュニティに学ぶコミュニティ運営のコツ─CIVIC TECH FORUM 2017

2017.05.18 Category:勉強会・イベント Tag: , , ,

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地域の課題をテクノロジーで解決する市民の活動、シビックテック。ここ数年で全国的に広がり始めたシビックテックは、今や企業や行政などにも広がりつつある。CIVIC TECH FORUM 2017で開催されたパネルディスカッション「社会インフラとなったオープンソースコミュニティに学ぶコミュニティ運営のコツ」を紹介する。 by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

オープンソースコミュニティに学ぶコミュニティ運営

同パネルディスカッションに登壇したのは、日本UNIXユーザー会幹事の法林浩之氏、国立研究開発法人情報通信研究機構 北陸StarBED技術センター研究員の湯村翼氏、そしてモデレータをCode for Kanazawa(コード・フォー・カナザワ)の代表理事の福島健一郎氏が務めた。

左から、福島健一郎氏、法林浩之氏、湯村翼氏

法林氏はフリーランスエンジニアとして活動しており、日ごろはさくらインターネットに常駐。OSS貢献者賞を受賞している。

湯村氏は国立研究開発法人情報通信研究機構 北陸StarBED技術センター研究員として、ネットワーク、サイバーフィジカルシステム、スマートホームなどの研究をしている。

プライベートではいろいろなコミュニティを立ち上げ、運営している。その一つがおうちハック同好会幹事。過去にはニコニコ学会β、NASA Space Apps Challenge tokyo事務局などを運営していた。最近では、品モノラジオという月1回のポットキャストのラジオも運営している。

福島氏は、かつてITベンダー系の会社で音声言語処理の研究開発に従事していた。現在は独立し、IT系の会社を経営している。

オープンソースコミュニティとは何か

法林:オープンソースソフトウェアとは、開発したものを公開しているソフトウェアで、オープンソースコミュニティはオープンソースソフトウェアにかかわる人のコミュニティ。参加しているのはプログラマの人だけではありません。

ソフトウェアを使って何かものを作ったり、サービスを作ったりする人、そしてそういう活動をサポートする人たち(開発環境の整備やコミュニティメンバー同士のコミュニケーションをサポートするなど)も参加しています。

ドキュメントを書いたり、翻訳したりという活動もしています。ソフトウェアに関わる人はコミュニティのメンバーです。オープンソースという概念が出てきたのは1990年代の終わり頃ですが、考え方としては80年代からありました。

90年代の終わりから2000代の初めに全国のLinuxのコミュニティができてきたんですね(消えていったところもある)。今のシビックテックの各地にあるコミュニティはLinuxのコミュニティに似ています。

福島:たしかにシビックテックのコミュニティはオープンソースコミュニティと似ていますが、シビックテックは市民参加型で解決法を考え、ICTで実現するためのコミュニティ。実はエンジニアの参加数が少なく、例えばコード・フォー・カナザワではエンジニアの割合は5分の1ぐらい。エンジニアだけのコミュニティではないですね。

コード・フォー・カナザワは活動を始めて4年になりました。100人ぐらいのメンバーがプロジェクトを組んで活動し、地域課題をテクノロジーで解決します。具体例は5374.jpというゴミをいつ捨てればよいかが一目で分かるアプリ。このプログラムはオープンソース化しており、誰でも利用ができる。現在、100都市以上で使われています。

コード・フォー・カナザワがすべて作っているわけではありません。沖縄だと沖縄のコミュニティの方々が沖縄版の5374を作っています。その地域の課題を解決する形をとっている。これがシビックテックの特徴。お金をもらってやっているわけではないんですね。

私としては、非営利として自分たちが解決したいと思える課題だから解決しています。そして、それを喜んでもらえる人がいるという充足感。このような感覚でエコシステムとして回っているのです。

シビックテックコミュニティのエンジニア比率を高めたいので、エンジニアがOSSコミュニティに入る動機について聞きたいと思っています。

エンジニアがコミュニティに入るきっかけについて

湯村:おうちハックというコミュニティは、スマートホーム化に特化した集まりがなかったので始めました。ブログやTwitterを検索すると、趣味の時間を使ってスマートホーム化に取り組んでいる人がいます。そこで「LTで発表しませんか」と声をかけたりして、今のような集まりができました。

法林:おうちハックは個人の課題を解決するように、OSSのコミュニティも自分が使わないモノのコミュニティをやることはありません。コミュニティに入るきっかけの一つは、貢献すること。OSSにお世話になっていると、お返ししたいという気持ちが生まれる。それがコミュニティに入る動機となっています。

もう一つは何らかの利益があること。例えばクラウドサービスのコミュニティは全国にあるが、ここに入っている人たちはクラウドサービスを使ってサービスを作れば売れることをモチベーションにして頑張っています。

OSSやシステムやサービスを使ってもらってお金を得るなど、何らかの仕事になるので活動をするという側面がある。利益があることが入る動機になるのではないでしょうか。

お世話になったものにお返しをするためにはシビックテックのお世話にならないといけないが、そこが少ないのかもしれないと思っています。

福島:「お世話になった」という価値や感謝がエンジニアに上手く伝わっていないんですよね。例えばコード・フォー・アメリカは、エンジニアがすごく格好いい。コード・フォー・アメリカのエンジニアとして活動したいといったモチベーションがあります。

法林:エンジニアに対する需要は高いことはわかったが、それを支援する人や企業の存在も必要だと思う。例えば、Rubyはまつもとゆきひろさんが開発したプログラミング言語でOSSです。

当初は個人で開発していたものをOSSとして公開したら、ユーザーがたくさんつき、人が集まってコミュニティができた。Rubyの需要が高まっていくことで、企業や人のサポートがもらえるようになり、OSSプロジェクト一つでやっていけるようになる。

シビックテックの場合、企業のサポートがあまりない印象です。そのあたりのサポートがあると変わってくるのではないでしょうか。

福島:たしかに米国は日本に比べれば企業も活発だし、公共の方もがっちり関わってくれますね。

法林:15年ぐらい前までは、OSSを日本の企業がサポートすることはなかった。OSSの価値が上がって、企業も必要性を感じたことから、今はイベントをすると企業がスポンサーとして出てくれるようになってきました。

湯村:OSSの恩恵を受けているから、ITの先進企業であるGoogleやMicrosoftもコンピュータサイエンスの土台に還元する文化としてスポンサーをしています。

福島:メンバーの流動性が低い、活動資金の調達といった問題はどうクリアしていますか。

湯村:おうちハック同好会はスポンサーを受けていません。スポンサー対応のコストがかかるし、スポンサーの意向を尊重するなど調整も発生します。

なのでイベントをやるときに、会場代とビールやおつまみは参加者で負担しています。活動資金は多ければいいものではない。やりたいことに対して必要十分な集金スキームを考えることが大事だと思います。

メンバーの流動性を高めるために

法林:メンバーの流動性についてですが、OSSのコミュニティの中にも高齢化が問題になっているところがある。上手くいっているコミュニティはユーザー数そのものが多く、入ってくる人も多いので流動性が保たれます。

もう一つは意識的に若い世代に主導権を渡していくこと。母集団を大きくする努力と入りやすくすること、敷居を下げる努力をする。いろんな団体と交流すること。こういったことで、流動性は保たれますね。

湯村:メンバーの流動性はどこのコミュニティでも課題になっています。ニコニコ学会βは、立ち上げる時に5年で終了すると宣言していました。コミュニティは後になればなるほど、続けることが目的となってしまう。終わりを決めることも大事です。

法林:Linuxのコミュニティはみんなが使うようになって当たり前になった。コミュニティはある程度それに関わるものが少ない時に発生する。みんなが知っている状況だとコミュニティをつくって集まる必要がない。

Linuxはそういう状況になったので、消えていったコミュニティも多いですね。シビックテックのコミュニティは普及まではいっていない。使命を帯びて終わるのはまだだいぶ先。これから関わる人たちが本当にシビックテックをやっていく人たちになると思います。

福島:どうしてOSSコミュニティは成果を出し続けられているのだと思いますか。

湯村:中から見ると失敗続きでたまに成功しているぐらい。成果を出すには、まずたくさん立ち上がることが大事ですね。

法林:誰もが参加できることが大事。OSSコミュニティの場合は、やる気があれば誰でも参加できます。人材の流動性が高い。もう一つは、自由な競争があること。競争があると、ソフトウェアの品質があがる。シビックテックコミュニティも競争をすると良いと思います。

湯村:例えばRubyなどはGitHubを活用して開発しているので。誰がどのくらいコミットしているか貢献度がわかる。その辺がモチベーションに火を付けるカギだと思います。

福島:確かにシビックテックコミュニティでもエンジニアの貢献度はわかるけど、それ以外の人の貢献度が見えないのは大きな課題かもしれませんね。その辺がうまく分かる仕組みを作っていきたいですね。

最後にシビックテックに対してエールを送ってください。

湯村:シビックテックはまだ認知度が低いので、職場や近所の人たちとどんどん話して広げていくと良いと思います。

法林:OSS発展した理由の一つにインターネットやSNSの存在があります。コミュニティは地域に依存していますが、貢献先は地域でなくてもいいはず。

住んでいる地域にこだわることはないので、面白そうなコミュニティを見つけて参加してみてください。

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(写真提供:CIVIC TECH FORUM 2017運営事務局)

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