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電子行政・子育て応援・公園情報・給食事故防止…地域の課題をテクノロジーで解決する活動紹介─CIVIC TECH FORUM 2017

2017.05.18 Category:勉強会・イベント Tag: , , ,

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地域の課題をテクノロジーで解決する市民の活動、シビックテック。ここ数年で全国的に広がり始めたシビックテックは、今や企業や行政などにも広がりつつある。CIVIC TECH FORUM 2017の「ランチ食べながら聞く事例LT」では、8つのシビックテック作品や活動などが紹介され、盛り上がりを見せた。 by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

生活と距離と人と時間と電子行政が田舎で必要なわけ

最初に登壇したのは行政アーティスト/ハウモリ Feat.CfSの山形巧哉さん。LTのタイトルは「生活と距離と人と時間と電子行政が田舎で必要なわけ」。

「電子行政なんて都会の話、田舎にそぐわない」。これは間違いである。例えば北海道森町。この町の場所は札幌から南に4時間程度。東京からもわずか4時間半程度。函館へは南に1時間程度で着く。

だが森町濁川地区の公共交通機関は、8時間に1本のバスのみ。環境も厳しい。つまり公共機関での移動はほぼ無理なので、住民は一人1台車を持っている。

こんな状況で行政は何もやっていないのか。森町と千代田区を比較してみる。人口は約3倍差(森町1万7004人に対し千代田区5万6873人)、歳出予算は5倍(森町90億円、千代田区480億円)の差がある。

しかし対住民コストは差が少ない。森町に対応人数は78人。人口比からしても田舎の行政は頑張っている。ここで大切なのは、行政運営はどちらも同じぐらいかかっているということ。管理道路は2倍の差がある。

田舎は不便なままかというと、それは違う。今や買い物はネットでできる。つまりネットは道路(移動手段)である。実生活ではネットという道路の活用が進んでいるのに、行政は物理道路を使っている。

であれば、物理にこだわる必要はない。電子化すれば効率化と利便性が明らかに増す。行政もネット化が必要。だから電子行政は都会の話ではなく、田舎にこそ電子行政が必要なのだ。

子育て応援アプリ「のとノットアローン」

続いて登壇したのは、のとノットアローン・エリアマネージャーの山上幸美さん。子育て応援アプリ「のとノットアローン」の紹介を行った。

開発のきっかけは2015年9月6日アーバンデータチャレンジ2015 in 能登に参加したこと。子育てママ3人と金沢からきたエンジニアの男性がチームになった。輪島ではつながれる場所をアナログでつくっていたが、つながれない人がいた。

そんな孤立しているお母さんにネットワークでつながってもらいたいという話をしたところ、エンジニアの方がまとめてくれた。このような地域的な悩みを解決するために、4人で相談して作ったのが「のとノットアローン」である。

子育て応援情報を集約するWebアプリの開発に取りかかることに。輪島市、珠洲市、能登町、穴水町、金沢市が子育てに関するデータを提供してくれる。

4月にリリースしたが、新聞に載ったり、テレビで放映されたりと、メディアでも注目され、今では多くのママたちが活用してくれている。「これがないと子育てをどうしたらいいかわからない」という声も聞かれるほどだ。

エリアマネージャーとしては、各地の子育て支援センターに出かけて、紹介している。今では月300人のユニークユーザー。毎月の更新のお知らせをするFacebookページのフォロワーが250人(1月末現在)。16年4月から17年1月までの間で登録されたイベントデータ661件。地図位置データ350件以上となっている。

ママたちも半数が必要だと思うと答えてくれている。201年にはエンジニアが増えてチームも増強。今後はもっと使いやすいデザインになっていくはずだ。

輪が広がって月に1回は集まって情報交換している。開発が参加しやすい、運営が継続しやすい仕組みを作りが今後の課題である。

ちなみに同アプリは今年、アーバンデータチャレンジのアクティビティ部門の金賞を受賞している。

ディスレクシアの人のための読み上げ機能付きYouTubeプレイヤー

3番目に登壇したのは、津田塾大学の應武双葉さん。タイトルは「ディスレクシアの人のための字幕読み上げ機能付きYouTubeプレイヤー」。

ディスレクシアとは文字の読み書きに困難がある障がい。日本では難読賞、識字障がいとも言われている。日本での発症率は4.5パーセント。症状例としては文字を読んだときににじんだり、ゆがんだり、さかさ文字になったりぼやけたりする。

ディスレクシア保護者の会の人に話を聞くと、海外の映画やニュースには字幕が必須だが、ディスレクシアの人たちは読むのが困難だという。そこで動画の字幕を人口音声で読み上げるシステムを製作することにした。

YouTubeのブックマークレットをクリックすると、該当ページに飛ぶ。スピード調整などはスライドバーで音の調整ができる。日本語以外の言語にも対応。Chromeをはじめとした対応ブラウザではスマホでもPCでも95パーセントの方が利用できる。

小学生9人に使用してもらった結果、動画の理解度が高まったと、システムの有効性が示せた。

ディスレクシアの人は認知されていないという問題がある。教科書が読み上げられないなど、小学生の段階から問題が出ているので、この現状を知ってもらいたい。今後さらなるシステムの改善をして、ディスレクシアの方を取り巻く環境を良くしていきたいと語った。

同サービスはリクルートが開催しているマッシュアップアワードのシビックテック部門賞を受賞した。

日本全国の公園情報が手に入るアプリ「PARLFUL」

4番目に登壇したのは、コトラボの椛田泰行さん。LTのタイトルは「オープンデータから始まるみんなの公園プロジェクト」。

コトラボはパブリックスペース向けのソフトウェア開発を担う専門会社。「PARKFUL」という街中の小さな公園から一日遊べる大きな公園まで日本全国11万箇所以上の公園情報を提供するアプリを開発し、2014年にローンチした。

公園登録数は11万件。しかし利用者の声は厳しく、公園の情報の質を高めていくことになった。昨年11月に神奈川県の県庁と連携してスマート県庁推進課×PARKFULが始まった。

利用者と一緒にデータを充実させたいが、オープンデータには愛がたりないと思っている。役所のデータはマネジメント運営中心のデータだからだ。

そこでフォトコンテストを毎月行っている。昨年の春には桜だけを扱ったフォトコンテストを実施。桜名所100公園として配信した。

「まだまだ公園文化を作っていない。情報を活用して日本を公園最先端の国にしていきたい。みなさんの協力を得て、オープンデータを充実させたい」と語る椛田さん。4月にバージョンアップを予定している。

給食のアレルゲンを把握し給食事故を未然に防ぐ「4919 for Ikoma」

5番目に登壇したのは奈良先端科学技術大学院大学ユビキタスコンピューティングシステム研究室 修士1年の河中祥吾さん。

4919 for Ikoma」という給食のアレルゲン管理と子どもの食育をサポートするアプリを紹介した。同アプリはIkoma Civic Tech Award2016という生駒の未来アプリ・アイデアコンテストで、アプリ部門の最優秀賞を受賞した。

開発の背景は食物アレルギーの児童が増加している。政府や自治体の対応もあるが、現状として対応がバラバラ。

食物アレルギーへの対応が進められているものの、給食中の事故が増加している。そのような事故を防ぐことはできないかと思い開発した。

アプリの機能は当日、当月それぞれの献立が確認できるほか、カロリーや栄養バランスも確認できる。個々の料理をタップすると、含まれるアレルゲンや食物リストが公開される。

またアレルゲンが含まれる献立については、事前にアレルゲンを登録すると自動で通知してくれるという機能を実装。毎朝親から子どもへの注意喚起ができる。

今後の展望としてはクラス単位管理でできるという機能を実現すること。このアプリはGoogleが提供するクラウドサービスのFirebaseでデータを管理している。

アプリ自体は表示・通知のみを担う。GitHubでソースコードは公開しているので、FirebaseアカウントとJSON形式の献立データベースのみでほかの地域用のアプリへと展開が可能だ。食育という語呂合わせで、Code for初の語呂合わせシリーズとして展開していきたいという。

アプリについては生駒市のオープンデータポータルサイトにも掲載されている。

ParmoSenseという町歩きイベントや観光などでオープンデータ化情報収集に使えるアプリを簡単に作れるプラットフォームアプリも開発しているので、ぜひ活用してほしい。

横浜市港区版保育園幼稚園マップWebサイト

6番目に登壇したのは、NPO法人ぴーのぴーのの畑中祐美子さん。LTのタイトルは「まかないめしとGitHub」。横浜市港区版の子育て支援アプリを開発したプロセスなどを紹介した。

コード・フォー・港北で活動している。「どろっぷ」という子育て支援NPOでは、港北区役所と共にオープンデータを活用した子育て情報サービス検討プロジェクト(OKP)を実施。

港北区は人口が多くて交通のアクセスも良い。平成26年の出生数は3万3646人。全国175区で最大の出生数を誇る。一つ問題なのは転入・転出が多いこと。毎年2万5000人が入れ替われるが、ほぼそれらの人は子育て世代。

子育て情報がないと困るが、引っ越しが多いので知り合い・つながりが激減し、子育て情報が入ってこないという問題があった。

地域でいろいろ活動はしているが、知る人ぞ知る的な地域の自主的な子育て支援活動となっており、身近なところに子育て情報はなかった。

そこで子育て支援アプリがあったらいいなということになり開発することになった。

なかなかうまくいかず、勉強会などを開催。2016年度に向けて地区別保育月意見交換会の実施。根回しが必要だということがわかった。

子育て支援NPOとしては課題解決のために何ができるのか。Code forKohokuと協働で進めることに。いろんなエンジニアにつながって2016年度後半から勉強会を実施している。

GitHubでソースコードを開発。福祉の職員、区役所職員、IT技術者などが自分の得意を生かして、開発を進めた。

オープンデータを活用したプログラミング教育

7番目に登壇したのは、キャスタリアの山脇智志さん。「オープンデータを活用したプログラミング教育」。

キャスタリアは約10年前に設立された、モバイルラーニングプラットフォームの開発をしている会社である。プログラミング教育事業部を立ち上げ、プログラミング教育も実施している。

というのもプログラミングを誰が教えるのかという問題は解決されていないからだ。そこで上越教育大学と共に「CodeEdu/Coruses for Future Code Educators」を作り、2016年10月からスタートした。

現在30名が学習しており、今後は半年ごとに100人が学び、卒業する予定となっている。

上越教育大学の大森康正先生は、8月23日にFacebookで以下のように書き込んでいる。

「学校におけるプログラミング教育を推進していくには、シビックテックの発想が重要。そのためには市町村、教育委員会が積極的に行政の持つ各種データをオープンデータ化することが必要と考えている。

行政が財政難で取り組みができないとところを、地域住民が自ら解決のために取り組み、結果として住民サービスが充実することになると思う。中高で行うプログラミング教育は、ここを目指すべきだと思う」

これはただごとではない。山脇さんはオープンデータをどうやって使っていけるのか考えてみた。

3年前に長野県にギークラボ長野というエンジニアの公民館を立ち上げたところ、今や盛んに勉強会が行われるようになった。

コミュニティがエンジニアを生み出す、育成すると、コミュニティの重要さを感じたという。そこで、中学生を対象としたコミュニティ「OpenEduLab」を2017年4月から会津大学で開催する。

オープンデータを教材に、地域社会を考え、関係を持ち、興味を持てるようなプログラミング教育を行い、エントリーレベルから入ることの出来るエンジニアコミュニティを生み出す。

作った人に話を聞いてなぜ作ったのかをインプットさせる。横の関係性を作り、コミュニティを構築。またオープンカリキュラムとして展開していきたいと語った。

「ペライチ」で誰もが気軽にWebで情報発信できる社会に

8番目に登壇したのは、「ペライチ」というサービスを提供するホットスタートアップの藤田彩月さん。LTのタイトルは「誰もが気軽にWebで情報発信できる社会」。

個性が生きる社会作りをしたくて、昨年ジョインした。主に営業やマーケティングなどビジネスサイド全般に従事している。直近は47都道府県ごとにコミュニティを作りユーザーの成長と拡大にまい進している。

ペライチは誰でも簡単に全デバイス対応のWebページを無料で作れるサービス。つまり、誰もが気軽にWebで情報発信できる社会を実現することができる。

特徴は3つ。第一はシンプルで直感的な操作性で誰でも簡単に作れる。第二に50種類のテンプレートを用意していること。そこからイメージに合うモノを選ぶだけだ。第三はマルチデバイス対応。PC。スマホ、タブレットに自動で最適化される。

リリースして約2年で登録ユーザー数は3万5000人以上。スモールビジネスが主なターゲットだが、大手企業の方やNPOにも利用してもらっている。

藤田さんは2つの事例を紹介。個人事業主の事例では、弱視で本業は事務のスタッフが、自分の強みを生かして人の役に立ちたいとテープ起こしを行うことに。本業以上に声がかかるようになったという。

民間企業の事例は、佐賀県にあるコワーキングスペースで都市部企業とコラボし事業を生むことで、地方創生を民間から支援したことを紹介。地元のビジネスを地元の大学生がペライチを使って情報発信することで地域を盛り上げている。

初めてPCを持つ学生から、PCやデザインに不慣れな社会人でも簡単に使えるのがペライチ。全国47都道府県でコミュニティを作り、ペライチユーザーがセミナーやワークショップを開催するなど、ユーザー同士が横のつながりを持てる仕組み作りをしている。

ホットスタートアップのビジョンは「つくれるのその先へ」。これからも誰もが気軽に活躍できる社会を作るために貢献していきたいと宣言した。

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(写真提供:CIVIC TECH FORUM 2017運営事務局)

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