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触覚に戯れる33時間!「ショッカソン2017」レポート

2017.09.26 Category:勉強会・イベント Tag: , ,

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2017年8月26日~27日にわたり、触覚技術を使って新しい体験を作るハッカソンイベント「ショッカソン(Shock-a-thon:触覚ハッカソン)」が渋谷FabCafeで行われた。24時間でプロトタイピングし、デモを行う、その最終日の発表の模様をレポート! by 大内 孝子

ハプティクス技術が開く新しい世界

触覚、身体感覚は、次世代のコンテンツ市場を牽引するxR(MR/AR/VR)コンテンツには必須ともいえる分野だ。「触覚をハックする」、このテーマに4年前から取り組んでいるショッカソンでは、今年も数多くの作品が登場した。

毛を抜いた瞬間を味わう「毛ぬき」、リモートで肩をもんでもらう「リモート肩もみ」、タピオカを吸い込んだ感じを再現する「タピオカストロー」、「触覚神経衰弱」などなど、完成度の高い作品が生み出された。

具体的な作品を見ていく前に、まずは今回のショッカソンで提供された関連技術を見ておこう。キーワードは「HAPTIC(ハプティック:触覚)」、「HAPTICS」(ハプティクス:触覚科学)」だ。

TECHTILE toolkit
(提供:慶応義塾大学大学院メディア研究科 身体性メディアプロジェクト)

TECHTILE toolkit(テクタイルツールキット)は、IOボックスとして、ものや身体から触感を記録し、それをものや身体にフィードバックする。つまり、「いったん記録することで触感の再生や拡張をデザインできる」のだ。

これは、触覚・身体性メディアを専門とする慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)准教授の南澤孝太氏、同環境情報学部准教授 筧康明氏、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の仲谷正史氏らが開発したもの。

「触覚」をデザイナーやクリエイターがプロダクトやサービス作りに活用できるよう、触覚デバイスの制御をツールキットとして提供する。クリエイター側はテクタイルツールキットを通して、シンプルに触覚デバイスの入力と出力を扱うことができる。

日常の生活の中で触覚を身近なものにしようという「HAPTIC DESIGN」プロジェクトとして、テクタイルツールキットを使ったワークショップなども行われている。公式サイトには、ツールキットを自作する方法やソフトウェア、採集された触感データが、基本的にはオープンソースで公開されている。

皮膚振動伝達装置(提供:名古屋工業大学 田中研究室)

指に巻いたセンサーで、ものにふれたときの皮膚の振動を検知する。アナログの入出力も備えており、振動を電圧信号として計測したり、入力値として波形を用いることも可能となっている。

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名古屋工業大学大学院工学研究科の田中由浩氏が開発したもので、触覚を数値化したり、再利用することが可能なデバイスだ。

<参考>田中由浩氏HP / テック技販の「人の感覚を数値化する」製品

SPIDAR-S(提供:ハプティック技術推進協議会)

東京工業大学 精密工学研究所のSPIDAR-S(Haptic Device Attached to the Smartphone)は、スマートフォンに装着可能な力覚提示装置。力覚提示装置とはいわゆる「フォースフィードバック」で、力のフィードバックをユーザーに与えるデバイスのこと。家庭用ゲーム機のコントローラーや身体運動を伴うアーケードゲームなどに使われているが、VRデバイスの登場により、これまで以上に容易なシステム構成での再現が課題になっている。

SPIDAR-Sはイヤホンジャック経由で、スマートフォンから出力された音声を元にフィードバックを行う(イヤホンジャックがあれば、スマートフォン以外のデバイスにも装着可能だ)。それにより、ユーザーに擬似的に触感を与えることができる。

電気触覚ディスプレイキット(提供:電気通信大学 梶本研究室)

電気触覚ディスプレイは、電極から電流を流すことでフィードバックを返す触覚提示装置。電極はマトリクス状に配置されており、それぞれの電極へ高速に通電することで、刺激を与える点を”集まり”として提示する。つまり、LEDマトリクスで文字や図を表示させるように、電極の点(の刺激)で文字や図を表わすことができるというもの。また、指が触れた電極の抵抗値変化を取得することでタッチパネルにもなる。

電気触覚ディスプレイ

小型超音波集束装置(提供:東京大学先端科学技術研究センター 星貴之 助教)

指向性が高い超音波は、ソナーや超音波検査など探知・検査といった分野からドリルや加工機といったアクチュエータ的なものまで、さまざまシーンで活用されているが、さらに超音波を焦点領域に集束し、局所的に力(エネルギー)を発生させる技術を使った集束超音波の研究も進んでいる。

この集束超音波は、対象物に非接触で力を作用させる技術として応用が期待されている技術だ。それを手軽に試せるよう小型軽量にユニット化したのが、星貴之氏の小型超音波集束装置。対象領域は20 x20x40(cm)、例えば手のひらをかざすと、点として圧を感じる。

こうして見ていくと、触覚は「検知・計測するもの」からフィードバックによって情報を伝える”素材”になりつつあることがわかる。

振動や動き、力をユーザーに与えることで皮膚に感覚のフィードバックを与え、それにより何らかの情報を伝達する技術・学問分野を「ハプティクス」(haptics:触覚科学)と呼び、実にさまざまな研究が行われている。

その他にも、イクシーの「EXOS」(外骨格型の力触覚提示デバイス)、H2Lの「UnlimitedHand」(ウェアラブルの触感ゲームコントローラ)、富士通の「interactive shoes hub」(センサーシューズ)、xenomaの「e-skin」(センサーを搭載したスマートアパレル)など、最先端のデバイスが貸与された。

(とはいっても)作りたいものを作る人たち

当日はアイデアソンから始まり、投票により上位になったアイデアでチームを組む。翌日の午後過ぎにはデモ、というほぼ24時間でアウトプットを作るというスケジュール。寝る時間を惜しんだチームも多かったのではないだろうか。







上記写真提供:ショッカソン運営

全部で10チーム。複数の作品を仕上げたチームもあり、作品としては10を越えるが、その中からいくつか紹介しよう。

あやつり人形(チーム:マリオネットつくるラボ)

このチーム、当初は筋電センサーの仕組みを利用し人の筋肉を動かそう(それにより、スポーツの指導などへの活用に使えるのではないか)と試みたそうだが、それは断念し、肘の曲げ具合を見て、一定の角度以上または以下であればフィードバックを与えるものになったという。

肘の曲げ具合はUnlimitedHandの加速度センサーを、フィードバックは電気触覚ディスプレイで電気の強弱を与える仕組み。残念ながら筆者は体験していないのだが、ちょっと痛いらしい。

写真提供:ショッカソン運営

この作品はSPIDAR賞を受賞。

タピオカ(チーム:タピオカ)

ストロー型のデバイスで画面に現れる「タピオカ」を、一定時間内に吸い込む数を競うゲーム。タピオカを吸い込む際の、抵抗感からスルッと入ってくるリアルな感触を実現するために、素材選びからこだわったという。

写真提供:ショッカソン運営

この作品は技術賞、および会場投票によるHappy Hacking賞を受賞。

ビビっとくる名刺(チーム:ハプ太郎)

テキタイルツールキット+振動ユニットで実装した、振動する名刺。名刺交換の際、名刺を振動させることで相手に強い印象に残せる画期的なデバイスだ。企業の持つ音商標などと組み合わせると、強いCIイメージを相手に伝えることができる。

写真提供:ショッカソン運営

この作品はTECHTILE賞、およびUnity賞を受賞。TECHTILE賞のプレゼンターの筧康明氏は受賞理由として「すぐ製品になりそうな完成度」である点を上げた。

触覚神経衰弱(チーム:触覚神経衰弱)

名古屋工業大学の皮膚振動伝達装置を用いたもので、音声で振動パターンを入力し、指先の触覚で識別する神経衰弱ゲーム。プレイヤーは用意されたマテリアルから2つを選び、指先で同じパターンかどうか(あるいは、パターンの現れる順番)を判定していく。

写真提供:ショッカソン運営

この作品はFabCafe MTRL賞を受賞、「触覚は記憶に紐付いたりもするので、そういう設計もできるのではないか。今度に期待する」とプレゼンターのFabCafe弁慶さんこと小原さん。

波平の毛抜き(チーム:ケヌキ)

「ケヌキ」チームは複数の作品を仕上げていたが、その中で個人的に特におもしろかったのが「波平の毛抜き」だ。キューピー人形の頭からピュっと出ている1本の毛を抜くという体験ができる。

仕組みはシンプル、ソレノイドを使って毛を抜くときの抵抗感を演出している。もの自体は1日目で組み上がって、その後はひたすら「毛を抜くときの抵抗感」の調整に時間をかけたという。

この作品は見事アイデア賞を受賞。プレゼンターの簗瀬洋平氏(Unity Technologies Japan)は「誰でも作れる簡単なもので、『まさに、これだよね』というものを作れるのは一番素晴らしい」と語る。

以下は、写真を中心に。

Strawbees賞は「ガリヴァー交響曲」(チーム:スネークマンショーン)。巨人の指が迫りくる小人の感覚を味わうVRシステム。※写真提供:ショッカソン運営

プレゼンターのデジタルハイクさん手作りStrawbeesの月桂冠を頭にするチームメンバー

インタラクティブ賞は「ノンアルでベロベロに」(チーム:NonR(ノンアール))。ノンアルドリンクでもアルコール摂取時の感覚を味わうためのデバイス一式。※写真提供:ショッカソン運営

受賞理由は「頭の上から足まで、全身で触覚をまとっていた」ので。


ちなみに、装着するとこんなに可愛い感じになる。

そして、見事、ショッカソン2017の大賞は「VR腹文字」が受賞。

ゆるUnity電子工作部チームの作品だ。この作品は女の子が自分のお腹に文字を書いてくれるというVRシステム。体験中はおなかが丸出しになってしまうのだが、小型超音波集束装置が発する圧が「まるで、人が指でふれているような」感覚を想起するという。

写真提供:ショッカソン運営

受賞理由を求められ、プレゼンターの佐藤誠氏(東京工業大学 知能システム科学専攻)はまず第一声が「どうしてかな?」と。とはいえ「(自分も)体験しておもしろかったから」とエンタメとしてのおもしろさに昇華できている点を上げる。また、「いろいろな意味での完成度の高さ」に言及した。

この作品はMashup Awards 2017の一次予選をパスし、二次に進む予定だ。南澤氏は「体験として、おなかに触覚はありそうでなかった。そのポテンシャルをMashup Awardsで十分発揮してほしい」という。

最後に、ショッカソン2017を南澤氏はこのように振り返った。

南澤:今年もすばらしい作品が出ました。すごく短期間で完成度の高いものが出てくるようになってきて、4年も続くとレベルが上がっていっている。特に、社会人の方が仕事としてしていることを持ち込んでくるケース、協賛しながら参加するケースが増えていて、触覚のコミュニティが定着しているのを感じます。

ハードウェア、技術だけではなく、コミュニティの成長も着々と進んでいる。「触覚元年」がいよいよ現実味を帯びてきた。

最後は全員で記念撮影。来年の開催は未定とのことだが、期待したい

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